【現地発】バルベルデ監督が徹底させた「ある約束事」が、ブスケッツの存在感を際立たせる

2017年12月24日 エル・パイス紙

バルサにとって理想のミッドフィルダー。

バルサにとっては文字どおり攻守の要。クラシコでもその類まれなサッカーインテリジェンスを存分に披露した。(C)REUTERS/AFLO

 いまから2年前の夏、パリ・サンジェルマンはセルヒオ・ブスケッツ獲得のため、バルセロナに対して1億ユーロ(約130億円)のオファーを提示した。

 代理人のジョゼップ・マリア・オロビトグはこれを突っぱねた。「獲得したいならクラブによって設定された違約金(2億ユーロ=約260億円)を支払うのみ。それが唯一の条件だ」と、交渉に応じる姿勢すら見せなかった。

「ブッシ(ブスケッツの愛称)はバルサにとって、まさに理想のミッドフィルダーだ。移籍マーケットをいくら物色したところで、代役は見つからないだろう」と、クラブ内でもブスケッツの評価は絶対的で、しかもその存在感は、ラインをコンパクトにして連動した守備を徹底するエルネスト・バルベルデの監督就任を境に、さらに高まりを見せている。

「ブッシはどんなプレースタイルにも対応できる器用さを兼ね備えた選手だ。しかも周囲からのサポートが増した今シーズンは、持ち前の戦術眼を発揮できる環境がさらに整い、それがパフォーマンスの向上に繋がっている」と、クラブ首脳陣もその活躍ぶりに目を細める。

 ルイス・エンリケ政権時代のバルサは、シーズンを重ねるにつれてカウンター色が増し、撃ち合いの展開を好む傾向が強くなっていった。その代償として中盤はガラ空きになり、広大なスペースをカバーしなければならないブスケッツへの負担は高まる一方だった。

 現在、日本の東京ヴェルディで指揮を執るミゲル・アンヘル・ロティーナは、昨シーズンまでのブスケッツのプレーをこう分析する。

「ルイス・エンリケのバルサは、左右のサイドバックもつねに攻撃的に振る舞っていた。そのため、ボールを失うたびに相手チームにその裏のスペースを狙われていた。ブスケッツがカバーしなければならないスペースは余りにも広大で、彼は奔走を強いられていた」

 だが選手たちに、「味方との距離を10メートル以内にキープする」という約束事を徹底させたバルベルデ監督の就任を機に、ブスケッツの負担は激減した。前スペイン代表監督のビセンテ・デル・ボスケは、その効果の大きさをこう説明する。

「いまのバルサは、最前線のスアレスから最後尾のピケまで、全選手が適切な距離を保ってプレーできている。走行距離が減れば、おのずと無駄な運動量は減るものだ」
 

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