【日本代表】意地の決勝点は偶然ではない。生き残りたいなら井手口の姿勢に学ぶべきだ

2017年12月10日 佐藤俊

国内組だけの急造チームであるため、機能させるのは簡単ではないが…。

終了間際に決勝点!井手口が勝負強さを発揮した。(C)SOCCER DIGEST

 2万人の観客が、どれほど満足して帰っただろうか。
 
 アディショナルタイム、井手口陽介の劇的なゴールで1-0で勝ったが、それ以外はGK中村航輔の健闘が目立ったぐらい。GKが目立ったのはイコール北朝鮮に良い形を作られて攻められたということで、チームにとっては喜んでばかりいられない。
 
 この試合の目的は勝つこと。そのうえで個々の選手がアピールしないといけないという難しいミッションになっている。初めて一緒にプレーする選手もおり、国内組だけの急造チームであるため、攻守を上手く機能させるのは簡単ではない。
 
 優勝した2013年大会では3試合で8得点したが6失点しており、打撃の差で勝った。それを踏まえると、今回の初戦は北朝鮮をゼロに抑えて守備面はまずまず、と表向きには捉えられる。
 
 しかし、攻撃面や全体を見てみると北朝鮮のほうが決定機が多く、2、3点入れられてもおかしくはない展開だった。中村の好セーブがなければ試合後、ハリルホジッチ監督の愚痴が長々とつづくことになっただろう。
 
 試合を観ていて単純に思ったのは、選手はこの試合の意義を明確に把握しているのか、ということだ。求められるべきものはチームの勝利だが、勝ったうえで自分の個性をアピールする。自分勝手にプレーするのではなく、チームの中でより個を出し、輝くようなプレーを見せてワールドカップの切符を取りに行く。それが目的なはずだが、そういう姿勢で挑めば、少なくとも前半のような試合にはならないだろう。
 
 たとえば攻撃は、監督の要求を順守し過ぎた。
 
 ボールを取ったら早く前へ、ボールを握っている状態でも前へ。横パスで回すとハリルホジッチ監督が出てきて怒鳴っていた。
 
 選手は監督の要求を守ろうとする。だから、攻撃を急いでしまう。目の前の選手に早くパスを入れることに苦心し、その結果、パスの精度が低くなったり、タイミングがズレたりしていた。さらには、相手が上手く守備のブロックを敷いてきたこともあり、前につながらない。
 
 強固なブロックを崩すためには、縦パス、斜めのパス、裏へのパスなど駆使して打開していかなければならないが、そうしたパスだけでなく、50:50でトライするようなパスも非常少なかった。それでは、決定機的なチャンスなど作れるはずがないし、ゴールも生まれない。
 
 もっとも、これまで守ってカウンターというスタイルを重視してきたので、ボールを握って戦える場合の崩し方など、ほとんど練習をしていない。そのため、攻撃はピッチに出た選手任せになってしまうのでイメージが共有できず、チグハグになってしまうのは致し方ない部分でもあるのだが……。
 
 それでも後半、多少の変化が見られた。

次ページ次の中国戦では選手個々がもっと「らしさ」を発揮してくれるはずだ。

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