【現地発】プレミアで流行る「監督のローテーション」。彼らはなぜクビにされても起用されるのか?

2017年12月05日 山中忍

「火消し役」のサイクルは途絶えず。

パーデュー(左上)、アラダイス(右上)、モイーズ(左下)、ホジソン(右下)。彼らはなぜ「退屈」と揶揄されながら仕事を得られるのか? (C) Getty Images

 プレミアリーグはシーズンが半ばに近づくと、毎年12月からの過密日程が始まり、それと同時にプレミアリーグを戦い抜く手段として、「選手のローテーション」という言葉を耳にする機会も増える。
 
 だが今シーズンは、過酷なリーグを生き抜くための"監督のローテーション"が話題だ。
 
 先月、ウェストハム(18位)、WBA(17位)、エバートン(16位)は、それぞれデイビッド・モイーズ、アラン・パーデュー、サム・アラダイスの招聘を決めた。いずれも、新監督ではあるが、プレミアではもはやお馴染みの指揮官たちだ。
 
 さらに今年9月には、オランダ人指揮官のフランク・デブールを招き、一大転換を行なうも、スタートダッシュに失敗したクリスタル・パレスが監督交代に踏み切り、プレミア史上最年長の新監督としてロイ・ホジソンを迎え入れてもいた。彼ら4名がプレミアのクラブの監督に就任した回数は、合計で21回に上る。
 
 無論、必要とされるだけの経験の持ち主だという見方もできる。アラダイスとホジソンには、「ミラクル」と称賛された降格圏からの脱出を実現させた実績があり、モイーズとパーデューも含め、守備を立て直し、負けにくいチームを作ることのできる監督たちだ。
 
 しかし、降格の危機が去った後は、次第にオーナーからも、そしてファンからも、退屈な目で見られるようになり、チームが降格圏付近に落ちたところで見切りをつけられやすいのも彼らの共通点。そしてクラブは、また同じような残留争いの「火消し役」を迎えるサイクルに入る。いわば、監督の「堂々巡り」のようなものだ。
 
 例えば、先月29日にWBAの新監督となったパーデューは、昨年12月に前任地のクリスタル・パレスで、アラダイスと首をすげ替えられていた。両者には、元ウェストハム監督という共通点もある。
 
 この時のアラダイスのクリスタル・パレス就任は、世界的に規則で禁じられている選手の第三者保有について「ばかげたルール」と発言したことが発端となり、2か月という超短命に終わったイングランド代表監督解任から間もない頃でもあった。
 
 この2016-17シーズンの開幕前にサンダーランドに着任していたモイーズも、退屈なサッカーに終始し、結局、降格の憂き目に遭い、わずか1年での退任を余儀なくされていた。それでも、先月7日からパーデューやアラダイスと同じようにウェストハムの新監督となった。
 
 モイーズには、エバートンでの11年という長期政権の実績もあるが、それは、残留争いに巻き込まれながらも、まだ38歳でプレストン(2部)の青年監督に過ぎなかった彼に、全てを託したクラブの勇断に負うところも大きい。
 
 当時と現在では降格に伴う経済的ダメージが桁違いだろうが、今のプレミアのオーナーたちにも、降格の危機を長期的な視点で転機と捉えられる勇気を求めたいものである。

次ページ2部には有能な国産監督がいる! それなのに…。

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