【蹴球日本を考える】勝因は07年の浦和にもなかった美徳と10年経っても変わらないモノ

2017年11月27日 熊崎敬

アル・ヒラルにも07年の浦和にもなかったもの。

10年ぶりのアジア制覇を果たしたチームは、10年前のチームよりタレントの質量では劣るが「チームで戦う」精神があった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 10年ぶり2度目のアジア制覇。埼玉スタジアムが赤いサポーターたちの凱歌に包まれた。
 
 今回の優勝は、「日本らしさ」の勝利だと思う。
 初タイトルを獲得した2007年のチームは、「日本版銀河系軍団」と呼びたくなる豪華な布陣だった。ワシントン、ポンテ、闘莉王、三都主、ネネと実質5人のブラジル人を擁し、日本人も小野、山田、阿部、田中、永井、鈴木に若き長谷部と代表クラスが揃っていた。
 
 圧倒的なタレントの力で敵を捻じ伏せた07年のチームに比べると、17年の浦和は小粒だ。タレントの質量ともに見劣りする。
 
 決勝の2試合を振り返っても、よくもまあ勝ったもんだという内容だ。
 アウェーでの第1戦は自陣ゴール前に釘付けにされ、3、4失点しなかったのが不思議なほど攻め立てられた。ホームでの第2戦も主導権を握られ、アル・ヒラルが退場者を出した終盤、ゴールを奪ったものの押し込まれる展開は変わらなかった。
 
 テクニックではアル・ヒラルが一枚上手。
 浦和はひとりで前を向けないため、組織で攻めなければ形にならない。だが攻撃に人数をかけられないため、前に行くほど尻すぼみになった。これは日本サッカーの課題でもあるだろう。
 一方のアル・ヒラルは一人ひとりがプレッシャーを受けながらも巧みに前を向き、単独で局面を打開する。この差は大きい。
 
 だが、最後に勝ったのは浦和である。
 勝利は偶然ではない。このチームには07年の銀河系軍団にも、アル・ヒラルにもなかった美徳がある。それは最後まで粘り強く、チームとして戦う精神。日本人らしさといってもいいだろう。
 
 済州、川崎に劇的な逆転勝ちを収め、地力に勝る上海上港、アル・ヒラルには押し込まれたが、最後まで持ちこたえた。スーパースター不在のチームは、一人ひとりが労働者の精神で持ち場を守り、アジアの頂点にたどりついた。
 テクニシャンが揃うアル・ヒラルは波に乗ると手がつけられないが、最後に焦りから自滅した。こういうミスは、浦和はしない。

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次ページ敗北の10年。それでもチームを見捨てずともに歩んできた人々が頂点に押し上げた。

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