英国人記者が見た浦和のアジア制覇「CLファイナルにも勝る興奮と感動があった」

2017年11月26日 スティーブ・マッケンジー

正直、試合前のセレモニーは余計だった。

堀監督の下、チーム一丸となって悲願のアジア制覇を成し遂げた浦和。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 私は1999年のマンチェスター・ユナイテッド対バイエルン戦(いわゆるカンプ・ノウの奇跡)など、チャンピオンズ・リーグの決勝を過去6回取材した。しかし、11月25日のアジアチャンピオンズ・リーグ(ACL)決勝の第2レグは、それらにも勝る興奮があったように思う。
 
 浦和レッズのサポーターがアル・ヒラルにプレッシャーを掛けるさまは、まるで赤い荒波のようだった。1999年にカンプ・ノウの一部を埋め尽くしたマンUのサポーターたちを思い出した。
 
 試合前にアジア・サッカー連盟(AFC)が主導して行なったセレモニーを見て、私は「浦和にとってこれは不利に働くのでは?」と感じていた。というのも、式中に流れる音楽が大きく、浦和サポーターが作り出す荘厳な雰囲気がかき消されてしまっていたからだ。
 
 これは、第三者として観る者にとって、試合の雰囲気を台無しにする余計な演出のように思えたが、なによりサポーターの後押しを欲する浦和の選手たちにとっては少なからずマイナスに働いていたはずだ。無論、アウェーのアル・ヒラルにとってはポジティブな要素だっただろう。
 
 実際にアル・ヒラルはアウェーのプレッシャーをあまり感じていないように見えた。とくに後半は浦和のカウンターの芽を完璧に吸収して、攻撃のみに集中していたように思う。むしろ守勢に回された浦和のほうが神経質になっていた。
 
 とはいえ、赤きサポーターの耳をつんざくほどの声援とブーイングが浦和の選手たちにとって励みになったのは疑いようがない。この日の浦和は所々でパスミスが散見したが、サポーターの声は選手たちを俯かせず、前へ前へと突き動かした。
 
 浦和の勝利を信じ続けたサポーターたちにとって、第1レグを含む決勝戦で2ゴールをマークしたラファエル・シルバは、アジア制覇の英雄として記憶されるだろう。
 
 私にはR・シルバがここまでの大仕事をやってのけるようには思えなかった。というのも、試合序盤の彼は興奮気味で、空回りするシーンが目立ったからだ。彼のファーストタックルはレイト気味で明らかに相手の腕に当たっていたし、攻撃面でもドリブルを食い止められてフラストレーションを溜め込んでいるように見えた。
 
 そうした鬱憤を最後の最後に爆発させたR・シルバは、間違いなく浦和の英雄だ。こうしたヒーローの出現こそ、強者たる所以である。


【ACL決勝PHOTO】浦和が10年ぶりのアジア制覇達成! R・シルバが歓喜をもたらす
 

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