【W杯ドキュメント】メンバー発表のドラマ|ジーコの我慢と信念

2014年05月09日 週刊サッカーダイジェスト編集部

スポーツ史上に残るほどの異様な盛り上がり。

顔ぶれ、発表する順番など、ジーコの意志が強く示されたメンバー発表会見だった。 (C) SOCCER DIGEST

 多くの名勝負が後世に語り継がれていくワールドカップだが、4年に一度の大舞台に立つ権利を得るための、チーム内での争いは激しく、時に本大会での記憶が霞むほどのドラマを生み出すこともある。
 
 ブラジルへ向かう23選手の発表が目前に迫った今、過去4大会の"運命の瞬間"を、週刊サッカーダイジェストの当時のレポートで振り返っていく。
 
 第3回は、前回以上の好成績を期待される風潮のなかで、日本中がジーコの言葉に耳を傾けた、2006年ドイツ大会だ。
 
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 日本のスポーツ界にとって、ジーコ監督によるワールドカップ・メンバー発表記者会見は、まぎれもなく史上最大のものだった。400人を超える報道陣、30台近いテレビカメラが陣取り、その規模はそれまで最高と思われた2004年アテネ・オリンピック、女子マラソンの高橋尚子落選記者会見を上回る。異様な盛り上がりであった。
 
 ジーコ監督のメンバー発表ではいつの会見でも実に早口。緊張したり苛立ったりすると、その声のキーが上がるのが特徴だ。記者が聞き間違える可能性のある、かなり記者泣かせの会見なのだ。それを聞いたジーコ監督は「よし、分かった。任せてくれ」と言って、一人ひとりがしっかり聞き取れるよう、いつもよりもスローに読み上げたのだ。
 
 日本代表のメンバー発表は、本来ならば年齢順で呼ばれる。しかし、今回の発表はいつもと違っていた。複数の関係者の証言を総合すると、そこにはズバリ、ワールドカップにおける日本代表のスタメンを読み解くヒントが隠されていたというのだ。
 
 まずGK。いの一番によばれたのは川口能活で、土肥洋一、そして楢崎正剛の順で読み上げた。これは、ジーコの構想にあるGKの序列だという。そしてそれは、その他のポジションでも同様で、読み上げる順番が、それぞれの序列に当たるのだ。つまり正GKは川口で、楢崎は第三GKということになる。すでにこの序列は、カンタレリGKコーチからそれぞれに通告されていた。
 
 次にDFだ。このポジションで真っ先に名前が呼ばれたのは、ジーコ監督が「この4年間最大の発見」という、不動の右サイドバック、加地亮だ。そしてその控えとなる駒野友一。中澤佑二、宮本恒靖のセンターバックコンビに続いて呼ばれた坪井慶介、田中誠(※後に本大会直前で負傷離脱し茂庭照幸が追加招集された)が控え組に当たる。そして左サイドバックは三都主アレサンドロで、その控えが中田浩二といった具合だ。

次ページジーコが他の誰よりも高く評価していた久保。

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