アジアカップ初制覇へ、「なでしこ」の進化の過程

2014年05月09日 西森彰

アジアカップ初制覇へ、「なでしこ」の進化の過程

アジアカップ初制覇を狙うなでしこジャパン。欧州組の不在は痛手だが、新スタイルも徐々に浸透してきている。 (C) SOCCER DIGEST

 ロンドン五輪以後、なでしこジャパンは国際トーナメントの優勝から遠ざかっている。
 
 昨年は、積極的に若手を登用したアルガルベ・カップで惨敗。夏の東アジア選手権でも、3連覇に王手をかけながら、韓国との最終戦に敗れて涙を呑んだ。また今春のアルガルベ・カップでも準優勝に終わっている。
 
 2011年のドイツ・ワールドカップで優勝。2012年のロンドン五輪で銀メダル。ふたつの世界大会でファイナルを戦ったチームが、何の理由もなく低迷するわけがない。その理由は、2015年のカナダ・ワールドカップ、その翌年のリオ五輪に向けた「スクラップ&ビルド」に着手したからだ。
 
 佐々木則夫監督は、まず2013年を「もう一度世界一に挑戦するハートがあるかどうかを、選手に確かめる1年」と位置付けた。五輪後に続投のオファーを受けた指揮官自身が、「もう一度挑戦するかどうか」見つめ直す時間を必要としたほどなのだ。
 
 世界一に立った選手のモチベーションを見極めつつ、将来性のある選手を次々と登用した。ふるい落とされる者も多かったが、有吉佐織(日テレ)、中島依美(I神戸)ら、ワールドカップや五輪に参加していない新戦力が徐々に定着。第3GKの座に甘んじていた山根恵理奈(ジェフL)もレギュラーを争うほどに成長している。
 
 戦術面でも、「大きな大会がない時期に取り組んでいかなければいけない」(宮間あや・湯郷ベル)と割り切り、新しい攻撃スタイルにトライした。これまでのようなショートパスをつなぎながら丁寧にビルドアップするだけでなく、縦に速い欧米のチームが得意とするスタイルだ。昨夏の欧州遠征や東アジア選手権では、ややもすると形にこだわり過ぎる場面も目に付いたが、タイトル喪失の痛みを糧に、バランスを体得しつつある。
 
 今年のアルガルベ・カップでは、従来の遅攻をベースにしながら、タイミングのいい速攻も加わった。攻撃陣はペナルティーエリア外からも積極的にゴールを狙い、シュートレンジは目に見えて長くなり、これに負けじと後ろの選手もロングフィードを駆使している。「昨年1年間の取り組みもそうですし、選手同士での共通理解、イメージの共有もできているかな、と感じています」と宮間。
 
 1年半を要したが、来年のカナダ・ワールドカップ、再来年のリオ五輪に向けて、なでしこジャパンは、2015-16モデルを確立しつつある。
 

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