【現地発】ピケを超一流選手にした「クールでアツい」性格

2017年11月17日 工藤拓

カタルーニャ独立に際しては感情をむき出しに。

クールに敵を封殺しながらも、時に情熱的なプレーも見せるピケ。CBとしてのクオリティーはいまも世界最高レベルだ。(C)Getty Images

 2017年10月1日。カタルーニャで行われた独立の有無を問う住民投票にて、スペイン政府が送り込んだ警察隊が投票所を占拠する独立支持派市民に立ち退きを強要。800人超の負傷者が生じた。
 
 同日、異例の状況下で無観客開催されたラ・リーガ第7節ラス・パルマス戦後のミックスゾーンにて、バルセロナのジェラール・ピケは涙ながらに警官隊の武力行使を非難していた。
 
「スペインには今日起きた出来事を許さない、民主主義を信じる人々がいる。そう思っていなければ、代表には行っていない。それでも監督や協会の関係者にとって自分の存在が問題となるのなら、2018年より前に道を譲っても構わない」
 
 ピケがあそこまで感情をあらわにするのは珍しいことだ。
 
「クール」で「クレバー」で「エレガント」。ピケのプレースタイルを形容するには、それらの言葉がよく似合う。
 
 194cm・85kgの恵まれた体格ながら、高さ、強さといったフィジカル要素でごり押しするタイプのDFとは一線を画す。ボランチやCFまでかなりのレベルでこなせてしまうテクニックとサッカーセンスの高さは、従来のCBの概念を覆すものだ。
 
 しかし近年その役割が急速に多様化・複雑化してきたこのポジションにおいて、ピケがかれこれ10年近くも世界で5本の指に入るレベルを維持してきた最大の要因は、その優れたインテリジェンスにある。
 
 敵味方の位置関係を把握したうえで、相手FWのマーク、スペースのケア、そして他のDFたちのカバーリングを両立できるベストのポジショニングを見出し、さらにラインコントロールの指示も出しつつ、2、3手先の状況まで先読みしてプレーの選択、実行を繰り返す――。そんな作業をいっときも集中力を切らさず、90分間ミスなく継続しなければならないCBは、恐らくサッカーにおいて最も頭が疲れるポジションである。
 
 ピケはこうした高精度かつ迅速な判断&実行能力を必要とするプレーを、誰よりも正確に遂行する。
 

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