小野伸二の思考――J1残留目前の今「稀代の天才」は何を思うのか

2017年11月14日 斉藤宏則

「最終的にモノを言うのは、自分たちがどれだけ積み上げてきたか」

小野は「新しいことに着手して何かを変えられるほど、簡単じゃない」とも語った。(C)SOCCER DIGEST

 31節では首位の鹿島に1-2で敗れたものの、ライバルチームも勝点を伸ばせなかったため、次節にもJ1残留を決められる状況まで辿り着いた。いわゆる王手というやつである。敵地で清水と対戦する32節に勝利するか、あるいは同日に1時間早く行なわれる試合で16位・広島が敗れれば、来季もJ1で戦うことができる。ともに今季からJ1復帰を果たしたC大阪の躍進が注目を集めているが、札幌の健闘ぶりも見事なものである。
 
 そうした状況で突入した国際Aマッチウィークによる2週間以上のインターバル。前節を終えてから18日の清水戦までは19日間もある。残留に王手をかけたチームはどのようなメンタリティでこの日々を過ごすべきなのだろうか。今年でプロ20年目を迎える大ベテラン、38歳の小野伸二に話をぶつけてみた。
 
「特に意識することは何もないですよ」
 
 おおよそ想定通りでもあったのだが、ほぼ即答だった。ただし、知りたいのはその背景にあるものだ。
 
「別に、次の試合だけですべてを決めるわけじゃないから。一発勝負なわけでもないし。今季僕らがここまでやってきたことの積み重ねによって、いまの状況があるだけ。キャンプからやってきたことを、このインターバルのなかでもしっかりと継続していく。意識をするならば、そこじゃないですかね」
 
 リーグ戦の成績は、年間を通しての戦いで順位が決まるもの。得てして周囲は何かが決まる節目の試合を過度にフォーカスしがちだが、当事者である選手たち、特に20年目ものキャリアに加えワールドカップや五輪、欧州CLなどのビッグゲームを幾度も経てきた小野などは、懸命に取り組んできた日々の価値を非常に大事にしているように感じる。
 
 実際に「最終的にモノを言うのは、自分たちがキャンプからどれだけのものを積み上げてきたか、だと思う」と小野はキッパリと言う。そして「ちょっとインターバルがあったからといって、新しいことに着手して何かを変えられるほど、簡単じゃない」とも続けた。

次ページJ1残留は札幌にとってタイトルにも匹敵する。

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