【蹴球日本を考える】敵に嫌がられる試合をしたいハリル…されど選手にその精神は見当たらず

2017年11月11日 熊崎敬

敵に嫌がられるチームとは、プレー以前に執拗さや意地の悪さを精神に備えているものだが…。

日本はブラジルに対して“嫌がられるプレー”ができていただろうか。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

[親善試合]日本 1-3 ブラジル/11月10日/リール(フランス)

 中盤は山口と長谷部を底に、頂点には井手口。守備的な顔ぶれで臨んだチームが、序盤から守りでミスを連発しては、いい試合になるはずがない。
 後半に1点を返したとはいえ、前半に3点を許した時点で勝負あり。日本はブラジルを本気にさせることなく敗れ去った。
 
 1、2点目はミスからだったが、特にGK川島のPKストップをフイにした井手口のクリアミスはいただけない。
 PKの場面、フィールドプレーヤーはGKが止めた時に備えていなければいけないのに、クリアボールを拾った井手口は冷静に対処するどころか慌てていた。恐らく試合の雰囲気に呑まれていたのだろう。こういうミスを見ると、現時点での井手口はブラジルと戦うには力不足だったと言わざるをえない。
 
 見るべきものの少ないゲーム。とはいえ私は、守備的な戦いそのものが悪かったとは思わない。というのもワールドカップのグループリーグでは、少なくとも3試合中2試合が格上との戦いになるからだ。であれば当然、ボールを回して崩すことより、しっかり守ってボールを奪うところから考えなければならない。
 
 ハリルホジッチ監督が香川ではなく、井手口を使ったのも、そうした理由からだ。求められるのは、上手い選手ではなく嫌がられる選手。これはチームの方向性にも当てはまる。ハリルホジッチ監督は、上手いチームではなく嫌がられるチームを作りたいのだ。これについてはいいと思う。
 
 だが、ここまで考えて私は困ってしまう。
 敵に嫌がられるチームというのは、プレー以前に執拗さや意地の悪さを精神に備えていなければいけない。ところがそれが、日本には見当たらないのだ。
 
 後半アディショナルタイム、攻勢に出た日本は吉田、酒井宏、森岡、酒井宏とつないで鮮やかに右サイドを切り崩した。
 将棋でいうなら、あとは詰むだけ。ストライカーなら舌なめずりして仕上げにかかるところだ。ところが、この千載一遇のチャンスで浅野は慌てふためいてしまう。
 こういう選手たちで、敵に嫌がられる試合をしなければならない。これがハリルホジッチ監督の目下の最大の悩みだろう。
 
 4日後のベルギー戦、メンバーは変わるはずだが、試合の方向性は変わらないだろう。日本は敵に嫌がられるゲームができるのか。もう1試合見て、このテーマについて考えてみたい。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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