【改めて振り返るU-17W杯】久保建英や平川怜らは、世界との"真剣勝負"でなにを得たのか?

2017年11月05日 川端暁彦

自分たちのサッカーを貫かなかったことを非と取る向きもあるが…。

大会を制したイングランドに惜敗した日本。その戦いぶりに賛否両論あるが、胸を張るべきだ。(C)Getty Images

 2017年、通算17回目のU-17ワールドカップを制したのは"フットボールの母国"だった。
 
 大会MVPに輝いたMFフィル・フォデン(マンチェスター・C)だけでなく、この大会のイングランドはどこを切り取っても「タレント」と形容できるスター候補生がズラリと並んだ。大会途中でMFジェイドン・サンチョ(ドルトムント)が離脱を余儀なくされたが、その穴がまったく穴にならないほど、ベンチメンバーも充実していた(守備面を考えると、むしろ「サンチョ後」のほうがチームとしての強度は上がっていたくらいかもしれない)。
 
 準々決勝では「黄金世代」の誉れも高いアメリカを4-1、準決勝では王国ブラジルを3-1で粉砕し、決勝では欧州王者のスペインに先行を許しながらも5-2とパワフルに逆転勝ち。グループステージでも3試合すべてで3点以上をマークした破壊力は他の追随を許すものではなく、強健なるヤングライオンズの戴冠は必然だった。
 
 その「本当に強い、ホンモノの相手」(森山佳郎監督)に対して0-0のPK戦(3-5)まで持ち込み、「勝つギリギリのところまで迫れた」(MF平川怜/FC東京)というU-17日本代表の勇戦ぶりはもう少し評価されていいのかもしれない。

【U-17W杯PHOTO】グループリーグは1勝1分1敗で決勝T進出決定も、惜しくもラウンド16で敗退!
 
 帰国した森山監督やスタッフに対する反応としては「よく頑張ったね」という声がある一方で、「もっとボールを回さないとダメでしょう」「結果はPKまでいったけど、内容が良くなかったね」といった意見も多いようで、ちょっと驚いた。これらは冷静な視点なようでいて、余りに夢想的な視点だと思える。
 
 堅守を誇るチリやメキシコですらボロボロに砕かれ、列強国のブラジルやスペインですら粉砕されてしまったイングランドの攻撃陣という要素を除いて、「自分たちのサッカーができたかどうか」を評価軸にしてしまう。こうした風潮は実のところ日本の育成年代では珍しいものでもない。

「自分たち」がいて「相手」もいるのがサッカーなのだが、「相手」の存在を度外視して「自分たち」だけにフォーカスしてしまう。これでは、対敵競技であるサッカーの本質的なモノが抜け落ちてしまうのではないだろうか。2014年のブラジル・ワールドカップにおけるA代表の惨敗を経ても、サッカーの大会を採点競技の発表会のように捉えてしまう向きは消えないらしい。
 
 森山監督が取り組んできたことのひとつに、こうした「相手は関係ない」というサッカー観からの脱却があった。「相手を観てサッカーをしよう」ということは口酸っぱく繰り返されてきたフレーズで、相手の強みを消しながら、相手の弱みを見出して突いていく。それも含めてサッカーであり、今大会で日本と対峙した相手もまた、日本の弱みを突いて強みを消しに来た。

 当たり前なのだが、「自分たちの良さを出せるかが一番大事」といった考え方は少なくないので、そうした考えの方からすると、守備から試合に入り、前半は相手のハイプレスをいなすためにロングボールを蹴ることを厭わず、最後の時間帯で勝負をかけようとする。そのようなゲームプランで臨んだ日本代表のイングランド戦は批判的に解釈されてしまうようだ。

次ページお互い勝ちにいっている真剣勝負の場。”W杯”は発表会ではない。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事