【現地発】「メッシのために喜んで走る」パウリーニョが懐疑論を払拭しバルサにもたらしたものは?

2017年10月26日 工藤拓

不安要素はわずか数試合で解消された。

入団当初は懐疑的な見方が少なくなかったパウリーニョだが、ここにきてメッシらをサポートする能力が高く評価される。(C)Getty Images

 スーペルコパで宿敵レアル・マドリーに大敗して(2試合合計1-5)不安を抱えて開幕を迎えた今シーズンのバルセロナだが、その後はラ・リーガ、チャンピオンズ・リーグともに開幕から文句なしの結果を出し続けている。ここまで両コンペティション合計で11勝1分け無敗の33得点・4失点だ。
 
 ネイマールをパリSGに強奪され、後釜としてドルトムントから獲得した期待のウスマンヌ・デンベレは早々に負傷離脱。さらにルイス・スアレスは動きが重く、多くのチャンスを与えられているジェラール・デウロフェウもパフォーマンスが安定しない。テロ事件やカタルーニャの独立問題などピッチ外の騒動も絶えない中、これだけ安定して結果を出せているのは、リオネル・メッシの活躍に加えてエルネスト・バルベルデ新監督のベンチワークによるところが大きい。
 
 デウロフェウが左では使えないと見れば、彼を右に移して左ウイングを置かない変則3トップを考案。中盤に厚みが欲しければMFを4人に増やし、スアレスとメッシを2トップとする4−4−2も採用する。バルサ伝統の4−3−3に固執せず、状況と選手に適したシステムにチャレンジする柔軟さに加えて、選手交代によって試合の流れを変える勝負師としての手腕も光っている。
 
 だがそれらの多彩な采配も、ピッチ上で選手たちが戦術を実行できなければ机上の空論となってしまう。複数のポジションで起用されながら、そのどこも中途半端なプレーに終始しているアンドレ・ゴメスは悪い例だ。逆に新加入ながらすぐに自身の持ち味を出し、指揮官に采配の幅をもたらしているのが、パウリーニョである。
 
 正直に言って筆者は、このブラジル代表MFが今もクラブ史上4番目に高い(デンベレ獲得により5番目に)4000万ユーロ(約52億円)もの移籍金に見合う選手だとは思っていない。だが少なくとも、ヨーロッパで活躍したことがないまま中国リーグへ流れ着いた経歴、バルサのプレースタイルとの相性といった加入時に向けられた不安要素は、わずか数試合のプレーを見ただけで解消された感がある。

次ページ往年のダービッツやケイタのように――。

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