【番記者通信】モイーズ電撃解任の裏側|マンチェスター・U

2014年04月24日 マーク・オグデン

後見人のファーガソンも解任に合意。

成績不振、補強の失敗、守備的な戦術……オーナーの信頼を失い、ファンの不評を買ったモイーズは、オールド・トラフォードを追われた。 (C) Getty Images

 デイビッド・モイーズ監督が電撃解任された。マンチェスター・ユナイテッドの取材を続けているわたしには、それほどの驚きはなかった。
 
 アレックス・ファーガソン前監督から職を引き継いだ当初、モイーズは「選ばれし者」と期待と羨望の眼差しを一身に浴びた。だがシーズンが進むにつれ、50歳のスコットランド人には懐疑の目が向けられるようになる。プレミアリーグでは中位に低迷し、FAカップはチーム初戦となった3回戦で早々と敗退。最後は「相応しくない者」とのレッテルを貼られ、本拠地オールド・トラフォードを去ることになった。
 
 解任へのカウントダウンが始まったのは、敵地でのオリンピアコス戦。チャンピオンズ・リーグ(CL)の決勝トーナメント1回戦、その第1レグ(2月25日)だった。アテネに乗り込んだユナイテッドは不甲斐ない出来に終始し、格下のオリンピアコスに0-2で敗れた。プレミアでの低空飛行にも、オーナーのグレイザー一家は「支持」の立場を貫いていたが、この予想外の敗戦で考えが大きく揺らぎ始めたという。
 
 その後も、チームは勝ちと負けを繰り返す。リバプール(3月16日)とマンチェスター・シティ(3月25日)への大敗でモイーズは心証をさらに悪くすると(いずれも0-3の完敗)、4月20日のエバートン戦の敗北が決定打となった。モイーズの古巣であるエバートンに終始圧倒され、0-2の完敗。しかも、来シーズンのCL出場権が手に入る4位以内がこれで消滅し、オーナー一家の我慢は限界に達した。
 
 試合後、グレイザーと最高経営責任者のエド・ウッドワード、ファーガソン前監督、クラブ役員のボビー・チャールトンがマンチェスター市内のホテルで緊急会談を開き、モイーズの解任を決定。彼を後任に指名したファーガソンも同意したという。
 
 成績不振もさることながら、決め手のひとつになったのが、補強の失敗だ。適正価格以上の値段で獲得したマルアン・フェライニとファン・マヌエル・マタの新戦力が思うような活躍を見せられなかったのは、資金を投じたオーナーからすれば、モイーズの許されざる失敗だ。
 
 米国人のオーナー一家は、ちょうど今週からモイーズ監督を含むコーチ陣と今夏の補強計画を協議する予定でいた。だが、約1億5000万ポンド(約263億円)とも、2億ポンド(約350億円)ともいわれる補強費をふたたびモイーズに託すのはリスクが大きすぎると判断し、解任に踏み切ったのである。「CLへの早期復帰」を命題に掲げるオーナー陣としては、もはやモイーズに全権を委ねることはできなかった。
 
 もちろん、解任の理由はほかにもある。守備重視の戦術は「慎重すぎる」と選手やサポーターに不評だった。シティやリバプール、チェルシーとの大一番にことごとく敗れ、勝負弱さを露呈したことも信頼が薄れた一因だろう。就任からわずか10か月足らずで、モイーズは「失格」の烙印をみずからに押したというわけだ。
 

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