【小宮良之の日本サッカー兵法書】ハリル流リアクション戦術を来夏のロシアでも通用させるために

2017年09月27日 小宮良之

ボールを“持たされる”と真価を発揮できず…

戦術的にもハマったオーストラリア戦で、ロシア行きを決めたハリルジャパン。日本のスタイルは世界でも勝てる可能性を秘めているが、その確率を高めるには多くのことをクリアする必要がある。 写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

 ロシア・ワールドカップ出場を決めたハリルジャパンだが、世界の強豪と渡り合えるのだろうか?
 
 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、選手に「戦闘力」を求める。戦闘力とは、単純な体力、走力のインテンシティーに置き換えられる。
 
 選考メンバーにはフィジカルプレーヤーが圧倒的に多いが、どれだけ闘争心を見せられるか、気迫の部分も問われる。原口元気、井手口陽介らはまさに「ハリルの申し子」と言えるだろう。
 
「デュエル」(1対1の球際)
 
 その一言で、ハリルホジッチは選考基準を端的に表現する。まずは個で負けないことが基本。「1対1」には、相手のマークを剥がし、ゴールに迫る、という攻撃的志向より、「相手に好きにさせない」という守備的志向に発想の出発点がある。
 
 いわゆるリアクション戦術だ。
 
 相手がボールを持っていることが前提。それを"狩る"わけで、強度と連係が最重要となる。その帰結として、できるだけ迅速に少ない手数でゴールに迫る。トランジッションで一気にアクセルを踏むのだ。
 
「前線からボールを追い、攻撃的に出ています」
 
 そんな表現がテレビ解説でされるが、フットボールにおける「攻撃的」は、ボールを敵陣で握り、ゴールに迫ることを指している。「積極的な守備」ではあっても、ボールを追うことは攻撃的ではない。それはあくまで、守備戦術のひとつである。
 
 では、戦闘力の高い選手を集めたリアクション戦術で、日本は世界の強豪に勝てるのか?
 
「ハリルホジッチの受け身の戦術は、相手が強い方が有効に働く」
 
 協会関係者からは、そんな意見も漏れ聞こえる。その一面は、間違いなくあるだろう。
 
 事実、ハリルジャパンはW杯出場の常連のオーストラリアとは、敵地でも本拠地でも、会心のゲームをしたものの、格下のシンガポールに引き分け、シリア、UAEには敗れている。ボールを"持たされた"試合では、しばしばノッキング……。真価を発揮できなかった。
 
 ただ、本当に強いチームが、格下に弱い、というはずはない。

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