【日本代表】”あの沈黙”を経て──。長友佑都が「理想論だけでは勝てない」と語った理由

2017年09月05日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

”あの時”とは、長友の表情がだいぶ違っていた。

オーストラリア戦で見事なアシストを決めた長友。写真:徳原隆元

 オーストラリア戦を制した後のミックスゾーンで、長友佑都が少し落ち着いた表情で話している。

「今回のワールドカップ出場は一番嬉しい。3回目ですけど、今回は格別ですね。なんなんだろう、この気持ちは。なんかこうホッとした気持ちもあるし、ベテランとしてチームを引っ張らないきゃいけないという気持ちもある」

 饒舌な長友を見て、ふと思う。"あの時"とはだいぶ表情が違うな、と。あの時とは、今から2年7か月前のアジアカップ。当時の長友は「自分たちのサッカー」にこだわりながらも歯が立たなかったブラジル・ワールドカップでの惨敗で心が傷ついたせいか、アジアカップの期間中はミックスゾーンでも滅多に口を開かなかった。

 沈黙の長友──。まさに、そんな感じだった。印象的だったのは、UAEとの準々決勝の前日会見。当時の日本代表監督ハビエル・アギーレとともにその会見に出席した長友に、こんな質問が投げられた時だ。

「ブラジル・ワールドカップでなにが足りなかったか。ここからの4年間、どうやらなければ世界基準になれないのか。それを踏まえ、アジアカップでどういうステップを踏みたいのか。明日のUAE戦も含めてどう考えているのか?」

 少し間を置いた長友は「僕個人のことですか?」と尋ね、質問者に「長友選手のこと、チームのこと」と言われると、またしばらく沈黙した。長友の印象について訊かれたアギーレ監督が「じゃあ、先に僕が話しましょう」と場を持たせると、その後、ようやく長友が沈黙を破る。

「すみません。さっきの時間でいろいろ考えていましたけど、なかなかワールドカップの時の心境と、次のワールドカップへの心境を語るのは本当に難しい。今、そのことについて考えていて、言葉に発するためにはエネルギーが必要で、ここではちょっと勘弁してもらいたい」

 次のワールドカップを戦う準備はまだできていない。そう捉えられてもおかしくないコメントだった。

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