効果抜群だったハリルジャパンの戦略。“理想”に憑りつかれた豪州に、かつての怖さはなかった

2017年09月02日 佐藤俊

コンフェデで見せた脅威がほぼ消失していた。

オーストラリアはポゼッションサッカーを志向したが、日本のプレッシングにあって機能しなかった。写真:田中研治

 オ-ストラリアの自滅を招いた日本の快勝だった。
 
 日本は41分、浅野拓磨がゴ-ルを決めるまでは失点しないことを優先し、なかなか決定的なチャンスを作れずにいたが、それ以上にオ-ストラリアが低調だった。
 
 オ-ストラリアのサッカ-の特長と言えば強いフィジカルとロングボ-ルを活かした空中戦だ。ところが2013年、アンジェ・ポステルコグル-がオ-ストラリア代表監督に就任するとポゼッションサッカ-を標榜し、世代交代を進めながらチ-ムスタイルを変えていった。
 
 その成果が出たのが、2016年にロシアで行なわれたコンフェデレ-ショズカップだ。ドイツには敗れたがカメル-ン、チリにはともに1-1のドロ-で終えた。早いテンポでパスをつなぎ、鋭くエリア内に侵入してくるサッカ-は、これまでの空中による肉弾戦を得意としてきたチ-ムとは180度異なるパスサッカ-で、世界基準で戦えるポゼッションスタイルを見せたのだ。
 
 それを分析した日本は、オ-ストラリアのポゼッションのクオリティが非常に高く、今回の試合は相当の苦戦を予想したという。
 
 実際、ベンチメンバ-も最終ラインと攻撃的な選手ばかり。そこから監督の試合に対する考えが見えてくるが、ハリルホジッチも「先行逃げ切り」ではなく、かなりの劣勢を想定していたのだろう。 
 
 長谷部誠も「今までのオ-ストラリアとは違う。より難しい試合になる」と、つなぐオ-ストラリアを警戒していた。
 
 ロシアへの切符を賭けたこの日の試合もオ-ストラリアはつないできた。コンフェデでの手応えと自信が選手のプレ-から垣間見ることができた。
 
 しかし、コンフェデと大きく違ったのがクオリティだった。全体のテンポが遅く、個々の選手がボ-ルを持っている時間が長かった。そのため出足の鋭い井手口陽介らにボ-ルホルダ-や受け手が再三潰され、つないで日本の守備を崩すことはなかなかできなかった。
 
 しかも左攻撃的MFのジェ-ムズ・トロイ-ジを始め、この日のオ-ストラリアは簡単なミスが目立った。昌子源は「攻撃での恐さはそれほどなかった」と言っていたが、コンフェデで見せた彼らの脅威がほぼ消失していたのだ。

次ページオーストラリアは、脅威となる攻撃を自ら封印した。

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