【番記者通信】帰ってきた“異端児”フラミニの無骨な魅力|アーセナル

2014年04月04日 ジェレミー・ウィルソン

チームに安定感をもたらした5年ぶりの古巣復帰

中盤の底で守備に奮闘し、リーダシップも兼ね備えたフラミニの復帰はアーセナルにとって価値ある補強となった。 (C) Getty Images

 3月29日のマンチェスター・シティとの大一番。1点を追いかける苦しい展開のなか、起死回生の同点弾を叩き込んだのは、今シーズンからアーセナルに復帰したマテュー・フラミニだった。53分に生まれたゴールは、チェルシー戦(0-6の完敗)、スウォンジー戦(2-2のドロー)と続いた悪い流れを断ち切るきっかけにもなりそうだ。

 フラミニは、2004年にマルセイユからアーセナルに入団。4シーズンに渡ってプレーした後、「クラブを去るのは簡単な決断でなかった。これからもアーセナルのサポーターであり続ける」との名言を残し、08年5月にミランへ移籍した。昨シーズン限りでミランとの契約が切れると、獲得に動いていたアーセナルへの再加入を決断する。5年ぶりの古巣復帰である。

 フラミニ加入効果はてきめんだった。中盤の底で献身的に守備を支え、チームに安定感をもたらす。身体を張った守備と溢れんばかりの闘争心は、アーセナルに欠けていた要素だった。仲間を鼓舞するリーダーシップも兼ね備えたフラミニが加わり、ブレない柱が一本出来上がった。アーセン・ヴェンゲル監督も、フリートランスファーで獲得したフラミニを、「移籍金2000万ポンド(約34億円)以上の価値がある」と絶賛する。

 アーセナルでは、伝統的に主将が試合で着用するユニホームを長袖か半袖にするかを決め、全員がそれに従う。どうしても半袖でプレーしたかった30歳のMFは、「長袖」の決定に反し、ユニホームの袖をハサミで切って強行出場してヴェンゲル監督を激怒させたことがあった。

 指揮官の指摘を受け、フラミニは猛省。以来、同じ過ちは犯していないが、こうした無骨さこそが彼の魅力である。「洗練されたサッカー」と称賛されるアーセナルの“異端児”。そう表現していいだろう。

【記者】
Jeremy WILSON|Daily Telegraph
ジェレミー・ウィルソン/デイリー・テレグラフ
英高級紙『デイリー・テレグラフ』でロンドン地域を担当し、アーセナルに精通。チェルシーとイングランド代表も追いかけるやり手で、『サンデー・タイムズ』紙や『ガーディアン』紙にも寄稿する。

【翻訳】
田嶋康輔
みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事