いまや20チーム中17チームが採用! なぜ、プレミアリーグで3バックが流行しているのか?

2017年08月26日 内藤秀明

タスクからの解放が鍵に?

コンテが採用した3-4-3。その理に適ったシステムは、プレミアリーグで瞬く間に広まった。 (C) Getty Images

 今シーズンのプレミアリーグにおいて、3-4-3が流行している。昨シーズン、チェルシーをプレミアリーグ制覇に導いたイタリア人指揮官アントニオ・コンテが持ち込んだシステムだ。
 
 その合理性に各チームの指揮官たちは目を見張ったのだろう。これまでプレミアリーグでは、馴染みのなかったシステムを採用するチームが増えた。
 
 とはいえ、その傾向は昨シーズンから見られていた。4月17日に、英国メディア『スカイ・スポーツ』が実施した調査によると、16-17シーズンに3バックを採用したチームは、前年度に比べて10チームから17チームにほぼ倍増。さらに用いた回数にいたっては34回から112回と3倍以上に増加していたのだ。
 
 今シーズンも潮流は同様で、開幕2節を終えた時点では1節に6チームが、2節には8チームが3バックを採用。このペースのままいけば、シーズン終了時点には、昨シーズンの2倍以上となる採用回数を記録することになりそうだ。
 
 ではなぜ、プレミアリーグで3バック、とりわけ中盤がフラットな3-4-3を採用するチームが増えたのだろうか。理由の一つに挙げられるのは、これまでプレミアにおいてスタンダードだった4-2-3-1あるいは4-4-2の採用時の選手負担の増加にある。
 
 例えば、セントラルMFでいえば、最終ラインからボールを引き出し、攻撃の起点となれる技術、ボックス付近にまで駆け上がってゴールに絡める運動量などが不可欠だ。
 
 加えて、守備面では空中戦や球際のデュエルで負けないフィジカル、さらにはチームをコントロールするパーソナルな面も求められ、はっきり言って役割過多だった。
 
 これが3-4-3の場合、セントラルMFに求められる役割は激変する。
 
 自陣での組み立てをCBが巻き取るため、以前より少しプレーエリアは高めになる。結果、以前ほどビルドアップ能力は必要とされない。守備の場面でもCBのサポートが得られる分、積極的に中盤の彼らがインターセプトを狙えるようになり、低い位置での守備のタスクから解放されるのだ。
 
 昨シーズンの覇者チェルシーにおいては、中盤における守備のタスクを最終ラインのダビド・ルイスが担うことで、エヌゴロ・カンテはボールホルダーをどこまでも追い回すことが可能となり、速攻に繋げることができていた。
 
 課せられる役割がより限定的になったことで、蘇った選手もいる。
 
 トッテナムのムサ・デンベレはプレミア随一のフィジカルを持ち、縦への推進力やキープ力でチームに貢献するタイプであったが、展開力を持たないため、従来の4-2-3-1の2ボランチでプレーすると、球離れが遅く、攻撃を停滞させてしまっていた。
 
 そんな彼が苦手なタスクから解放されたうえ、CBから近距離でサポートを得られるようになり、今シーズンは開幕2試合連続フル出場を果たすなど、これまで以上の貢献度を見せている。

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