【総体】なぜ流経大柏は夏を獲れたのか? “小さな巨人”が明かす「戴冠劇の舞台裏」

2017年08月05日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

主将・宮本優太と誓った「俺たちが変えようぜ」。

9年ぶりに夏を制した流経大柏。攻守ともにチグハグだったチームはいつしか自信を携え、試合を重ねるごとに逞しく成長を遂げた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 チーム屈指のファンタジスタは、真夏のトーナメントで黙々と汗をかき続けた。攻守両面でつねに最良の選択をし、名黒子となった菊地泰智。流経大柏の快進撃を陰で支えた、まさに"小さな巨人"だ。
 
 2年前、浦和レッズジュニアユース出身の青年は、千葉の強豪の門を叩いた。本来はFWもこなすほどの攻撃性能を誇るアタッカーで、160センチ・56キロというサイズながら体幹が素晴らしく、コンタクトプレーにも屈しない。自慢の左足を駆使してチームアタックに幅と奥行きをもたらす、天才肌の男である。

【総体決勝PHOTO】流経大柏が9年ぶり2度目の優勝! 2年生MF熊澤が決勝弾
 
 そんな菊地は、最終学年を迎え、自分になにができるかをあらためて熟考した。2年生だった昨年からともに主軸として活躍してきた主将、宮本優太とは、揺るがない固い絆で結ばれている。
 
「まあこっぱずかしいから面と向かっては言いませんけど、選手権予選で負けて新チームが立ち上がる時に、『俺たちが変えようぜ』と軽く言い合いました。どうすれば勝ち進めるかは、試合に出ていた俺たちにしか分からない。しっかり伝えていかなきゃと心に誓った。学校じゃいつもふざけ合ってますけどね(笑)」
 
 今大会5試合で、菊地のスタートポジションは目まぐるしく変わった。初戦(2回戦)と3回戦はボランチで先発し、以後は左サイド、右サイドと移り変わり、決勝ではトップ下に配備されている。本田裕一郎監督の菊地への高い信頼度の表われだ。そして、チームとしての攻撃の狙いもそこにあった。
 
 守→攻の切り替え時に、どこにいようがまず顔を出すのが菊地だ。散らすか、下げてやり直すか、それとも素早く縦へ送るか。チェンジ・オブ・ペースの中心にいた。
 
 背番号10はこう説明する。
 
「相手のスカウティングは徹底してますし、それを頭に叩き込んで試合に臨みます。どこで攻撃の起点を作るかは毎回違うし、そのなかで自分がなにをするのかも変わってくる。僕は左利きなんで、右に入ったら中へ切れ込んでシュートまで行くけど、左ならフォワードの落としを確実に拾いながら、開けてくれたスペースに上手く飛び込んでいったり。ボランチならどんどんパスを回して散らす。プロに行きたいから点を取ってアピールしなきゃなんですけど、まあ取れませんでしたね(笑)」
 

次ページ決勝に臨んだイレブンの表情には、どこか硬さが…。

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