【高円宮杯】浦和ユースが誇るU-17日本代表の大器が、いよいよ本格開花か!?

2017年07月10日 川端暁彦

187センチの17歳「もうこれ以上伸びなくていいです」。

スケール感が半端ない大桃。2年生ながら浦和ユースの最終ラインで異彩を放つ偉丈夫だ。写真:川端暁彦

 浦和レッズユースが誇る187センチのセンターバック、大桃伶音(れおん)をご存じだろうか。一歩ずつ進化を続けてきた偉丈夫が、いよいよ本格開花を迎えそうだ。少なくとも、その予感はある。
 
 7月9日に行なわれた高円宮杯プレミアリーグEAST、第8節の横浜F・マリノスユース戦。浦和ユースは苦しみながらも2-0でこのゲームをモノにした。奮迅の働きを見せたのが大桃は、「やっとひとつ、殻を破れた気がする」とこれまで感じたことのない手応えを口にした。
 
 カナダ人の父と日本人の母を持ち、大宮アルディージャの練習場からほど近い埼玉県志木市で生まれ育った。少年時代は、さして注目を集める存在ではなかったという。加入を切望した大宮の下部組織には入れず、浦和ジュニアユースへの入団も、一般セレクションを経てのものだった。
 
 中学2年時には、U-14・Jリーグ選抜の一員としてゴシアカップ(スウェーデン開催)に臨んだ。優勝メンバーに名を連ねたものの、大桃自身は主軸ではなかった。ただ、当時のチームスタッフたちの見立てはポジティブで、「きっと遅咲きだろう」というもの。身体的な成長に対して動きの部分が未熟で、そこが追い付いてきたときにどう化けるか。そんな期待をかけたくなる選手だったのだ。
 
 この時点ですでに170センチ台後半という体躯。身長はそこからさらに伸びて、現在は187センチに達している。CBとしては「もうこれ以上伸びなくていいです」と本人も笑って話すほど、申し分のないサイズだ。
 
 ユース昇格後は筋力トレーニングに加えて、食事も三食から四食に増やしてウェイトアップを試みた。「1か月ごとに目標体重が設定されている」という取り組みのなかで、体重はユース加入時の71キロから「79キロから80キロくらい」(大桃)にまで増加し、いまやその身体つきは、ユニホームの上からでも分かるほど分厚い。
 
 一方で、課題は明白だった。「基本、黙々とやるタイプ」と自己分析するように、リーダーシップの側面が物足りない。CBにとって「声が出ない」というのは、看過できないウイークポイントだ。再三に渡って指摘されたため、少しずつ改善傾向にはあったが、2年生になった今季に入ってからも不足感が否めないまま。今年3月にはU-17日本代表に久々の復帰を果たし、米国遠征に参加したが、森山佳郎監督からも戦う姿勢やコーチングの部分について厳しい指摘を受けることとなった。
 
 だが、転機は思わぬところでやってくる。プレミアリーグEASTの中断期間中に、右足側副靭帯を損傷し、大桃は戦線離脱を余儀なくされた。チームに戻ってからポジションが保証されているわけでもない。今回の横浜ユースとの一戦は彼の今後を左右する復帰戦であり、並々ならぬ意欲をもって臨んだ。

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