【川崎】衝撃決勝弾の阿部浩之が語った「パスを出さなかった理由」と「自己反省」

2017年06月18日 江藤高志

川崎のスタイルを考えれば中村へのパスを選択してもおかしくなかった。

ワールドクラスの一発を放った阿部(左)。今季5ゴール目となった。(C) SOCCER DIGEST

[J1リーグ15節]川崎 1-0 広島/6月17日/等々力
 
 決して広島が稚拙に守っていたわけではなかった。それどころか、堅守で川崎の攻撃を封じていた。公式記録では前半の川崎のシュートは0本。ボールはキープさせてもらえていたが、ゴール前を締められて難しい試合になっていた。
 
 だからこそ、チームを救うことになった阿部浩之のゴールの価値は大きかった。0-0で迎えた56分。川崎がペースを掴んでいた後半の立ち上がりの流れの中で決まったゴールはワールドクラスだった。推定距離は20メートルほど。左足のアウトにかけられたシュートは、絶妙に軌道を変化させ林卓人から逃げる形でゴールネットに吸い込まれていった。
 
 あの場面、阿部の前方には中村憲剛がパスをもらう気満々で動き出していた。もちろんその動きを視野に入れていた阿部はシュートを選んだ理由を次のように述べている。
 
「前半はああいうところでつないでばかりであまりシュートを打ててなかったので、打とうと思っていたので。ちょうどいいシーンかなと思って打ちました」
 
 川崎のチームスタイルを考えれば、あの場面は少しでも確率の高くなる選択肢を選ぶべく、中村へのパスを選択してもおかしくなかった。しかし阿部はシュートゼロに終わった前半を反省。あえてチームのやり方を無視し、シュートを狙った。外れていれば批判されていたであろうチャレンジだったが、これが見事なゴールとなった。
 
 川崎に貴重な勝点3をもたらすことになったこの得点については、チームメイトから賞賛の声が集中。必ずしも広島が順位ほどに簡単な相手ではなかったこともあり、勝利をもたらす値千金のファインゴールだった。
 
 これで阿部は今季5点目。キャリアハイとなるシーズン7得点の更新は目前だが、結果を出しているからといって過信していないのが阿部らしい。量産態勢に入りつつあるゴール数について聞かれた阿部は、「前で使ってもらっているし、シュートチャンスが多いので」と謙遜しつつ、「まだゴールが少ないかなというくらい。シュート数があるので、ゴール数を増やさなければいけないかなと思います」と自己反省していた。
 
 そうした謙虚さが、阿部が結果を残せる理由であり、サポーターや取材陣から愛される理由でもあるのだろう。状況に応じてプレーを判断し、結果を残してきた阿部が今季どこまでゴール数を伸ばすのか。非常に楽しみなところだ。
 
取材・文:江藤高志(川崎フットボールアディクト編集長)
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