【岩政大樹の視点】イラクの狙いに対応した日本。相手を動かす道筋は見つけられず

2017年06月15日 岩政大樹

中盤にリズムを作れる選手も必要だったと思う。

本田(4番)や大迫が身体を張って時間を作ったが、チームとしてのリズムの作り方には課題が残った。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

[ロシアワールドカップ・アジア最終予選]日本 1-1 イラク/6月13日/PASスタジアム
 

  先制点を幸先良く取れたことから「勝点2を失った試合」とも言えますが、様々なアクシデントや試合全体の戦いから見れば、引き分けも致し方ない試合だったと思います。
 
   それは裏を返せば、アジアにおける日本の優位性が、あまりなくなってしまったことを意味します。まだ個々のクオリティや戦術面で上回る部分はあるものの、以前のように長い時間ボールを支配する試合は見られなくなりました。
 
   先制点を奪った後、残りの時間はまだたくさん残されていました。暑さも考えると、相手に対応しながら時計の針を進めるだけではなく、自分たちで能動的にボールをつなぎ、相手を動かす作業も必要だったと思います。
 
   そもそも今の日本代表はそうした戦い方をしようとしていないのかもしれませんが、この試合だけを見れば、中盤にディフェンスラインと前線の間でリズムを作る役割を担う選手も必要だったと思います。

 大迫選手や本田選手が身体の使い方の上手さで時間を作るシーンはありましたが、チームで時間を操ることができれば、結果的に守備の回数が減り、相手にチャンスを与えなかったかもしれません。
 
   試合を通して、相手への対応はそれほど悪くなかったと思います。大迫選手の得点の後も全体は下げずに対応していました。「下げない」という選択は間違ってなかったと思いますが、秀逸だったのはイラクのゲームの進め方でした。
 
   高い位置から4-4-2のような形で守備に入った日本代表に対し、まずイラクは高い位置に敷いてある日本のディフェンスラインの裏に長いボールを何本も送り込みました。高いラインを設定しているため、戻りながらの対応となる日本のディフェンスラインは大きいクリアはできません。
 
 そうすると、大迫選手と並ぶように守備に入っている原口選手が戻る前に中盤でこぼれ球を拾うことができます。そこからイラクの左サイドに張っている6番アドナン選手に振ります。

 この時、日本の右サイドの本田選手はカウンターも想定しているので、アドナン選手は本田選手と酒井宏樹選手の間で一時的にフリーになります。そこからクロスボールを入れ、ゴール前に迫っていました。

次ページ後半の戦い方が少しもったいなかった。

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