【小宮良之の日本サッカー兵法書】司令塔不在の危機にある今、日本代表は新たな強みを発見できるか!?

2017年06月11日 小宮良之

“もうひとつのベスト”を持たざる者は苦しい戦いを強いられる

苦しみのなかから新しいものは生まれてくる。勝利が至上命令となるイラク戦で、日本は来夏の本大会に繋がる武器を見つけられるだろうか。写真はシリア戦後。 (C) SOCCER DIGEST

  本誌「サッカーダイジェスト」で、「日本代表の攻撃ベストユニットは?」という質問に答えるかたちでの記事を書いた。

「CFは岡崎慎司、左FWは原口元気、右FWは久保裕也、トップ下は香川真司」
 
 それが筆者の回答だった。
 
 もっとも、「ヴァイッド・ハリルホジッチが率いるチーム」という前提があるわけで、指揮官が好んで用いている選手をベストとするのは、至極当然だろう。それ以外のオプションはあまり考えられない。岡崎を大迫勇也に代えたりする選択肢はあるのだろうが、路線として大きく違わない。
 
 しかし、来夏に行なわれるロシア・ワールドカップ本大会の戦いを考えた場合、ハリルホジッチのベストユニットだけでは、日本は一敗地にまみれるだろう。
 
 異なるユニット、異なる得点パターンを持っているか?――。サッカーの世界においては、"もうひとつのベスト"を持たざる者は、苦しい戦いを余儀なくされるはずだ。
 
 2010年の南アフリカ・ワールドカップで悲願の初優勝を飾ったスペイン代表は、そのひとつの好例と言えるだろう。
 
 その基本的な戦い方は、ジェラール・ピケ、カルレス・プジョル、セルジ・ブスケッツ、シャビ、アンドレス・イニエスタら、バルサの選手を中心とした「ティキタカ(ショートパスを小気味良く繋ぎ、敵ゴールに迫る)」だった。
 
 ただ、彼らは決して、ティキタカだけに囚われてはいなかった。
 
 まず、3人の異なるタイプのストライカーを擁していた。ダビド・ビジャはサイドもできる万能タイプで、フェルナンド・トーレスは圧倒的なスピードが持ち味、フェルナンド・ジョレンテは高さとポストワークを武器とした。ビセンテ・デルボスケ監督は、彼らを局面で使い分け、戦いの幅を広げた。
 
 そして他のポジションでは、ボランチに入ったシャビ・アロンソはロングパスでアクセントをつけ、ヘスス・ナバスはサイドをドリブルで切り崩した。
 
 攻撃の柔軟さ、戦術バリエーションの多さが、スペイン代表の大きなアドバンテージになったのである。

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