【現地発】ダニ・アウベスが「カルチャーショック」を乗り越え、ユーベの「違い」になるまでの舞台裏

2017年05月13日 片野道郎

ユーベ悲願のCL制覇の切り札として迎えられる。

モナコとのCL準決勝では全4ゴールに絡む大活躍。まさにダニ・アウベスの独り舞台だった。写真:Alberto LINGRIA

 ユベントスがモナコを計4-1で下したチャンピオンズ・リーグ(CL)準決勝は2試合ともに、ダニエウ・アウベスの独り舞台だった。
 
 第1レグではタイミングの良い攻め上がりでモナコの左サイドを蹂躙し、ゴンサロ・イグアインに2つのアシストを提供。第2レグでもマリオ・マンジュキッチの先制ゴールを呼ぶクロスを送り込んだかと思えば、GKのクリアにダイレクトで合わせた見事なボレーシュートで決定的なゴールを叩き込んだ。
 
 2試合で4得点すべてに絡む活躍で、ユーベを2年ぶり6度目(チャンピオンズ・カップ時代も含めれば8度目)のCL決勝に導いた。
 
 昨夏、ユーベがバルセロナとの契約を満了しようとしていた33歳のダニ・アウベスを口説き落として獲得したのは、クラブにとって悲願である21年ぶりの欧州制覇のために、CL3回(バルサ時代)、EL2回(セビージャ時代)をはじめ数多くのタイトルを勝ち取ってきたその経験を必要としたからだった。
 
 ヨーロッパの頂点を目指すメガクラブ同士がぶつかり合うCLのビッグマッチでは、技術や戦術以上にメンタリティー、すなわち経験に裏打ちされた自信と確信の強さ、勝利への執念が違いを作り出すからだ。そして彼、ダニ・アウベスはその期待に100%応える活躍を見せている。
 
 12月から1月の2か月を腓骨骨折による離脱で棒に振ったこともあり、セリエAでの出場は17試合、プレー時間も全体の40%弱に留まっている。しかしCLでは、故障欠場したグループステージ最終戦を除く11試合に出場して3得点・4アシスト。これは出場全チームのDFの中でも傑出した数字だ。
 
 しかし、ここに至る道のりは平坦ではなかった。バルサからユーベへの移籍を通して、サッカーだけではなく生活環境や文化という点でも大きな変化に直面し、それに適応しなければならなかったからだ。
 
 ブラジルでも赤道に近い北東部、サンバ発祥の地でもある常夏の街バイーアに生まれ育ち、19歳から25歳までの6年間をスペイン南部のセビージャ、その後の8年間をバルセロナという気候温暖な地で過ごした陽気なブラジル人にとって、同じ南ヨーロッパでもアルプス山麓の内陸部に位置し、イタリアでも最も静かで控えめな土地柄で知られるトリノでの生活は、一種のカルチャーショックだったようだ。

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