残り3試合! 原点に戻ったアウクスブルクと歯車が狂ったハンブルク…1部残留を狙う両チームの明暗

2017年05月04日 中野吉之伴

バイエルンをも苦しめた、2シーズン前のサッカーが帰ってきた

スポンサー、ファンの後押しを受け、最後まで引かない積極的な姿勢を貫き、土壇場で踏み止まったアウクスブルク。残り3試合は厳しい戦いとなるが、彼らは確かな手応えを掴んだことだろう。 (C) Getty Images

 ブンデスリーガ第30節終了時で16位だったアウクスブルクは、15位ハンブルクをホームに迎えた大事な一戦を4-0で快勝。順位を13位まで上げることに成功した。
 
 最後のチャンスだった。この試合を落とすと、もう後がなかった。
 
 残り3試合のカードは、ボルシアMG(A)、ドルトムント(H)、ホッフェンハイム(A)と強豪ばかり。守備の要、マルティン・ヒンターエッガーは「ハンブルク戦、全力でプレーして勝点3を取らないと。(負けたら)残り試合を考えると難しい」と、いつも以上に気合を入れていた。
 
 全てを懸けた。
 
 この日のため、スポンサーである「WWK」のロゴではなく、「Augsburg hält zusammen(アウクスブルクは一丸となる)」と胸に書かれた特製ユニホームを準備した。
 
 広告のためにお金を出しているのがスポンサーだが、WWK代表取締役会長のユルゲン・シュラムアイアーは「このアクションをサポートすることができ、とても嬉しい」と、快く受け入れ、チームマネージャーのシュテファン・ロイターは「当たり前のことではない。感謝している」と、スポンサーの理解を喜んだ。
 
 スタジアムは30,660人の観衆で満員となり、全員に同じメッセージが書かれたTシャツが配られた。試合前にファンが選手のために作り上げた雰囲気は、MFフィリップ・マックスが「もうファンタスティックだったよ!」と興奮するほど、素晴らしかった。
 
 これに、選手はプレーで応えた。
 
 立ち上がりこそロングボールの蹴り合いになったが、徐々にアウグスブルクがペースを掴む。前線から積極的にプレスを仕掛け、セカンドボールをどんどん拾う。体力をコントロールすることなど全く考えていないのでは、と思わせるほど、最初から全力で走り回った。
 
「監督は、パーフェクトに選手の気持ちを高めてくれた」とハリル・アルティントップが振り返るように、マヌエル・バウムは吹っ切れた采配を見せた。
 
 解任が噂されるほど追い込まれていたバウムだったが、自分が一番信じる戦い方に思いを託した。ミスを恐れず、自分たちを信じて、どんどん前から押し込んでいく。
 
 象徴的だったのは74分の場面。2-0とリードしていたので、自陣左サイドでのFKで守りを固めようとしていたDFジェフリー・フーウェレーウに、バウムが「上がれ!」と何度も大きなジェスチャーで指示を出していたのだ。
 
「守り切ろうとするな! 俺たちは最後まで攻め切るんだと」と、指揮官はチームを鼓舞し続けた。そしてその後、チームはさらに2点を挙げた。
 
 戻るべき原点――。土壇場で、そうした戦いに必要な選手が復帰してきたことも大きい。特にFWアルフレッド・フィンボガソンは、重要な役割を果たした。前線からプレスをかけ、身体を張ってボールをキープし、何度もスペースに走り込んで味方の攻撃を引き出した。
 
 これまでのアクスブルクの攻撃は、サイドプレーヤーの存在を忘れているかのような攻撃ばかりだったが、この日はフィンボガソンのポストプレーを軸に、ゲームメーカーのダニエル・バイアーが何度もサイドのスペースへ好パスを配球する。
 
 これを受け、両サイドハーフのジョナタン・シュミッド、そしてマックスが躍動感たっぷりに、タッチライン際を何度も走り抜けていた。
 
 2014-15シーズン、5位でフィニッシュし、ヨーロッパリーグ出場権を手にした時のサッカーだ。全員守備による堅守と、どこからでもスペースに全力で抜け出し、相手が音を上げるまでギリギリのボールに飛びついていく。バイエルンをも苦しめた、あのサッカーだ。
 
 アウクスブルクは息を吹き返した。難しい試合ばかりを残しているのは確かだが、これまで以上に希望があるのは確かだろう。

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