ガンバ社長に訊きました「どれくらいビッグなクラブになれそうですか?」

2017年04月25日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

サッカー界ではいわゆる門外漢。

壮麗な吹田スタジアムに立つ山内社長。就任から1年、その胸中に宿るクラブ強化のビジョンとは? 写真:川原崇(サッカーダイジェスト)

 前任の野呂輝久氏の後を受け、ガンバ大阪の新社長に就任したのがちょうど1年前。パナソニックの営業畑で辣腕を振るってきただけあって、熱量とバイタリティーがこれまでの歴代トップとはやや異なる。
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 とはいえ、サッカー界ではいわゆる門外漢だ。山内隆司社長にとっては、目に入ってくるもの、聞こえてくるものすべてが新鮮だった。
 
「新しいスタジアムの立ち上げと同時で、とにかく一生懸命、取り組んできました。これまで経験したことがないスポーツエンターテインメントのところで、正直戸惑いを感じながらも、スタッフがよくサポートしてくれましたね。なんとか無事に1年が終わった」
 
 ガンバにとって過去最大のプロジェクトであった新スタジアム建設が完了し、いまや日本国内外に誇る良質な"器"を手に入れた。クラブとしては2005年のJ1優勝で初めてタイトルを獲得。以降の12年間で、アジア制覇など計9つの星をユニホームの胸に刻んだ(J2優勝は除く)。この数値は鹿島アントラーズに次ぐもので、いまや押しも押されもしない国内屈指の名門である。
 
 すでに器と格は手にした。4月に還暦を迎えたばかりの山内社長は、はたしてここからガンバをどのように進化させようとしているのか。
 
「まず私がやるべきは、そのための道筋作り。しっかりとした中・長期的な計画を夏までには立てたいと考えてます。右肩上がりの絵は、書くだけなら簡単なんです。でも一般企業の事業計画とは当然違うわけで、チームの成績などギャランティされてない要素が多いですから難しい。じっくり練り込みます」
 
 新スタジアムの集客は、2016年の第1ステージが2万6378人、第2ステージが2万4176人、そして今季の8節終了時点では2万1381人とややジリ貧だ。クラブはプロジェクションマッピングを駆使したショーアップや、観客から不満が出ていた再入場の禁止を解除するなど適宜対応をしているが、こけら落としから1年で減少傾向に転じているのは、やはり気になるところ。その点についてはどう捉えているのだろうか。
 
「魅力あるチーム作りですね。チームが強くなって、ホームでは負けない不敗神話や、つねに日本一を狙えるようなチーム作りが第一だと考えてます。(集客数が)上がり続けるのは端から難しいわけで、こうして下がってきたときこそが大事。サッカーの聖地にするという覚悟を持ってますが、さらにもっと意識を高めないといけない」
 
 今オフには、FWアデミウソンをサンパウロから完全移籍で買い上げ、DFファビオ(横浜F・マリノスから)やDF三浦弦太(清水エスパルスから)など即戦力を多く獲得した。一線級のターゲットマン確保は持ち越し課題ながら、山内社長は「それまでの身の丈にあった強化費用のねん出だったところから、先行投資が必要だと考えてチャレンジしました」と語り、「ハイリスクですが、(ダゾーンの参入によって)Jリーグのビジネスルールが180度変わって、弱肉強食になってきた。そこに挑戦しないとサポーターも喜ばないし、引いては大きなリターンも期待できない。2年目の新米社長としてはかなりドキドキものですが」と、苦笑いを浮かべた。
 
「ただ、そういう判断も、1年やったからこそです。このスタジアムを維持して収益を上げるには、やはりJ2では持たない。J1にいるのが当たり前のなかで、かつ優勝を狙えるチームじゃないと回せない。そういう意味においてのプレッシャーは去年よりもはるかに高いですよ。パナソニックは独立経営を求めてる。そこに甘さはない。でも私は、それでいいと思ってます。本当に苦しんで成し遂げるからこそ足腰が鍛えられる。それが私の使命。責任の取り方を明確にして、有言実行でやりたいと考えてます」

次ページいずれはアカデミー全体でも収益を。

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