まるで「戦術のデパート」。シメオネ対サンパオリのハイレベルな頭脳戦

2017年03月21日 江國 森(サッカーダイジェストWeb編集部)

開始25分で5人の位置を入れ替える奇策。

アルゼンチンの名将対決はサンパオリ(左)より11歳若いシメオネ(右)に軍配が上がった。(C)Getty Images

 3月19日に開催されたリーガ・エスパニョーラ28節、勝点差5で迎えた3位セビージャと4位アトレティコ・マドリーの上位対決は、3-1でホームのアトレティコの完勝に終わった。
 
 アトレティコのディエゴ・シメオネとセビージャのホルヘ・サンパオリ。アルゼンチン人の名将同士が繰り広げたハイレベルな頭脳戦は、非常に見応えがあった。いわば「戦術のデパート」のような一戦だったのだ。
 
 先に動いたのは、サンパオリだ。25分過ぎだった。3-4-3のシステムは維持しながら、5人の位置を入れ換えたのだ。まず、主戦場ではないセントラルMFに入っていたセルヒオ・エスクデロを本職の左ウイングバックへ移し、左ウイングバックのパブロ・サラビアを右ウイングへ。右ウイングのビトーロが左へ回り、左ウイングのウィサム・ベン・ヤーデルがCFに。そして、CFのサミア・ナスリ――実際はフリーマンとして自由に動き回っていた――をセントラルMFへと回したのだ。
 
 これには、主に2つの理由があったと考えられる。ひとつは、ナスリを「偽の9番」としてプレーさせる戦術がまったく機能していなかったこと。ボールを触りたがるが故に組立ての段階から下りてきてしまうため、前線で起点になる選手がいない状態に陥っていた。
 
 もうひとつはアトレティコのヤニック・カラスコ対策だ。通常の4-4-2の左サイドハーフではなく、右サイドで出場したベルギー代表MFの鋭い突破に、対峙するサラビアは手を焼いていた。より守備力の高いエスクデロに対応させたほうがいいのは明らかだった。
 
 敵将のプラン変更に、シメオネもすぐ反応する。そのカラスコをいつもの左サイドに回し、左に入っていたコケをセントラルMF、セントラルMFのサウールを右サイドへ配置。今シーズンのいわば「基本形」に戻したのだ。
 
 すると、この変更が効果てき面。36分、左サイドを駆け上がったカラスコがCBアディル・ラミのファウルを受けてFKを獲得し、このセットプレーからディエゴ・ゴディンが十八番のヘッドで先制点を奪うのだ。
 
 先制点を奪った直後には、サウールとコケの位置を再びチェンジ。よりディフェンシブな中盤の配置にするあたり、実にシメオネらしい采配だった。

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