【ベガルタ戦記】渡邉晋の『日晋月歩』|特別な日に試合をした意義や想いと向き合って

2017年03月13日 渡邉 晋

これほど思い悩んだ1週間はなかった。

神戸の右サイドハーフが永戸を徹底マーク。守備時に瞬間的に5バック気味になるなど、サイド攻撃に蓋をしてきた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第3回。テーマは「3.11」だ。多くの犠牲者を出した2011年の東日本大震災から丸6年が経過した。震災後初となる、3月11日の試合にどのような想いで臨んだのか。決して34分の1ではない、特別な試合を振り返ってもらった。
 
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[J1リーグ3節]仙台0-2神戸/3月11日(土)/ユアスタ
 
 3月4日に2節・磐田戦を終えてから3月11日の3節・神戸戦を迎えるまで、これほど思い悩んだ1週間はなかった。戦術面は対神戸だけを考えればいいから明確だったが、メンタル面をどう整理すればいいのか。もちろん、どの試合でも闘う姿勢を見せるのは当然のことだ。
 
 最初に、ゲームについて少し触れておこう。相手のストロングポイントを消すのが上手いネルシーニョ監督が率いるチームだけあって、「そうきたか」と感じるシーンは多々あった。例えば左ウイングバックに入った永戸(勝也)に対する蓋の仕方だ。
 
 対面した右サイドハーフ(スタメンは小川慶治朗、9分からは途中交代した松下佳貴)がワイドに開いていた。攻め残りをしてくれればフリーで永戸を使えると思っていたら、攻守が切り替わるとそのまま永戸のマークに付いてきた。神戸は守備時に、瞬間的に5バック気味になったのだ。
 
 ならばと、うちは左ストッパーの石川直樹を前進させた。もしくはタマ(三田啓貴)を同サイドに援護に行かせて、前を向いてプレーさせる。それによって優位性を保てると分かったから、前半途中から指示を出して、ハーフタイムにも確認をした
 
 では、守備はどうだったか。神戸のカウンターとリスタートが怖かったので、重点を置いてケアをさせた。すると、後半開始からウエスクレイを田中(順也)と代えて入れてきた。個で打開しにくる、とすぐに理解した。
 
 修正を十分に施す前に後手を踏んでしまい、5分間で2失点。ウエスクレイの個人技や彼を経由する攻撃には早めに慣れたし、実際に後半途中から「やられた」というシーンはあまりなかっただけに、もったいなかった。

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