「ゴール裏は暴力組織」と公に認定…セビージャのウルトラス問題が深刻化

2017年02月10日 工藤拓

セビージャにとって不可欠な存在であり続けてきたが…。

北側ゴール裏スタンドはラモン・サンチェス・ピスファンの名物。しかし、一部の過激派のせいで窮地に追い込まれている。(C)Getty Images

 2月4日、セビージャ最大のウルトラス『ビリス・ノルテ』が、グループとしての活動を停止すると発表した。
 
 ビリスは1975年頃、当時セビージャで活躍していたガーナ人FWのビリビリ(本名アルハジ・モモド・ニジェ)を称えるべく生まれたグループ。元は『ペーニャ・ビリビリ』という名の応援団としてスタートしたが、徐々に極左思想を持つ暴力的なウルトラスとしての性格を強め、一部が次第にライバルクラブのファンと衝突を起こすようになった。
 
 それでも、本拠地ラモン・サンチェス・ピスファンの北側ゴール裏に陣取る彼らの応援は、セビージャにとって不可欠な存在であり続けてきた。これまでビリスの蛮行により幾度となくクラブのイメージに泥を塗られても、彼らをスタンドから追い出すことができなかったのはそのためだ。
 
 しかし、2014年11月に起きた『ジミー殺傷事件』(アトレティコ・マドリーとデポルティボのウルトラスが衝突し、デポルティボ側のメンバーが死亡した事件)を経て、各クラブのウルトラス対策が強化されてきた中でも、ビリスは次々に問題を起こし続けてきた。
 
 この2年間でリーガ・エスパニョーラのコンペティション委員会が処分対象とした試合会場での暴言82件のうち、セビージャのそれは28件にも上る。そのほとんどはビリスが陣取る北側ゴール裏での事件であり、昨年12月17日のマラガ戦後にも同ゾーンのみ部分的な入場禁止を同委員会から提案されたばかりだ。
 
 昨年11月のユベントス戦(チャンピオンズ・リーグ)前日には、セビージャ市内のバルで夕食を楽しむ10数人のユーベ・ファンが、セビージャのフーリガンを名乗る40~50人の集団に襲撃を受けて、刃物で切りつけるなどの暴行を加えられる悪質な事件も起きた。
 
 そして、この事件が決定打となり、スペインの反暴力委員会は、2月2日にビリスを暴力組織であると公式に認定。これを受けて、クラブは『ビリス』や『ビリス・ノルテ』の名称、及びビリスのエムブレムが入った横断幕や旗の試合会場への持ち込みを禁止することを義務付けられた。
 
 ホルヘ・サンパオリ新監督の下、ここまでリーガで3位に付け、チャンピオンズ・リーグでもベスト16進出を決めるなど結果を出しているチームに、水を差すような出来事となった。

次ページ排除されるべきは暴力であり、ビリスの応援そのものではない。

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