キャンプで見えた”J1勢力図”。好調な神戸や浦和に対し、川崎や札幌は…

2017年02月10日 佐藤俊

優勝争いにも絡みそうな勢いと「やるぞ」という空気を感じたのが、神戸だ。

R・シルバの加入によって、浦和の攻撃パターンは広がった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 沖縄では川崎、鳥栖、神戸、浦和、札幌、名古屋、東京Ⅴのキャンプを見てきた。その中で今季、J1で優勝争いにも絡みそうな勢いと「やるぞ」という空気を感じたのが、神戸だ。
 
 沖縄では練習試合が1試合もなく、フィジカルを上げる練習がほとんどだった。ただ単純に走るのではなく、ゲームの中や練習の中で身体に負荷をかけていくやり方だ。練習を見ている限りではそんなキツさを感じないが、腿上げの縛りがあったり、制約の中でプレーすることが多く、見た目に以上にハードだ。
 
 G大阪から移籍してきた大森晃太郎も「普通の練習でこれだけ負荷がかかっているのははじめて。しかも、みんな100パーセントの力でやるんですよ。しんどいですけど、監督もまずは身体を作ることからと言っているんで、怪我しないようについていきます」と、驚いた様子だった。
 
 こうした練習は「1歩ずつ階段を上がるように力をつけていかないとJリーグでは勝てない」というネルシーニョ監督の信念に基づいている。ゲームにおける身体の強さと後半も走り負けない体力が試合の趨勢を決めるという考えだ。
 
 また、大森など神戸にそれまでいなかったドリブラーが加入し、戦術的な幅が広がった。大物感のある選手はいないが、小粒でピリリと辛い個性派が集まったネルシーニョ・ファミリーは、非常にいやらしいチームになりつつある。
 
 優勝候補の浦和は、それを地でいく強さを見せていた。
 
 札幌との練習試合を怪我で見学していた稲本潤一は「攻撃がすごいね。チンチンにやられた」と、その強さに舌を巻いた。昨季61得点獲った攻撃陣に今季はラファエル・シルバ、菊地大介、長澤和輝らが加入し、さらに分厚くなった。ただ、単に人を増やすだけではなく、ペドロヴィッチ監督の凄いところは獲得した選手の特徴を生かすような戦術をひとつ、ふたつ加えていくところだ。
 
 今回はR・シルバが入ったので彼に縦パスを当てて、サイドやボランチが一気に飛び出ていくという練習をしていた。浦和といえばサイド攻撃だが、今季は「中央突破」というテーマがあり、それに合わせた練習が組まれていたのだ。
 
 攻撃のバリエーションが増えると相手は的を絞りにくくなり、得点の可能性が広がる。そのためのフィジカル強化にも着手しており、2次キャンプでは過去5年間2回しかしていないフルコートでの紅白戦をやった。試合の長さに合わせて、しっかり走れるようにタフな身体作りをしているのだ。選手層と戦術面からの不安はない。あるとすれば選手の勝てるだろうという慢心と目立ちたいというエゴが出た時ぐらいか。

次ページ川崎の攻撃の連続性と多様性は、まだ昨年の域には達していない。

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