柴崎岳「スペイン移籍騒動」の舞台裏、テネリフェ加入はむしろ正解?

2017年02月04日 下村正幸

そもそも柴崎は多くの選択肢の中のひとりでしかなかった。

メルカート最終日に急転直下でテネリフェ移籍が決まった柴崎。その経緯とは? 写真:DeporPress

「漁夫の利を得たような気分だ。他の選択肢が消えていく中で、しかるべき時にしかるべき場所で我々はチャンスが来るのを待ち構えていた」
 
 柴崎岳の入団発表記者会見でテネリフェのテクニカルディレクター、アルフォンソ・セラーノはそう語った。
 
 鹿島アントラーズからの退団が取沙汰された今冬の柴崎は、一部メディアでリーガ・エスパニョーラ1部のラス・パルマスへの移籍が濃厚と伝えられながら、ヨーロッパの冬の移籍期限最終日である1月31日、急転直下で同じカナリア諸島に本拠地を置くもう一つのクラブ、2部のテネリフェへの入団が決まった。契約は2017年6月までの半年と発表されている。
 
 それまで、テネリフェという選択肢が日本はもちろんスペインでもまったく取沙汰されていなかっただけに、小さくないサプライズとなった。
 
 その真相を探るため、私はスペインの『アス』紙でラス・パルマス番記者を務めるディエゴ・フェリックス氏にコンタクトを取った。彼はクラブ関係者から「柴崎サイドから売り込みがあり、獲得に興味を抱いている」との発言を聞き出し、スペインでいち早くニュースを伝えていた記者だ。
 
 そんなフェリックス記者も「これが移籍市場というものだ。クローズするその瞬間まで何が起こるか分からない」と述べるなど、今回の移籍劇は青天の霹靂だったようだ。しかし、こうも付け加えている。
 
「そもそもラス・パルマスにとって柴崎は、数ある選択肢のひとりに過ぎなかった」
 
 ラス・パルマスにとって今冬の補強ターゲットは、ストライカーとサイドアタッカー。中でもその2つのポジションで機能し、昨夏レアル・マドリーから移籍したパリSGで完全に居場所を失っていたヘセ・ロドリゲスの獲得報道は、市場が正式オープンする前の昨年12月の時点から現地メディアを賑わせていた。
 
 14年ぶりの1部復帰から今シーズンで2年目を迎えるクラブにとって、ヘセは高嶺の花と見る向きも少なくなかった。しかし、前半戦の快進撃で当初の第一目標だった残留をほぼ確実にし、ヨーロッパ・カップ戦の出場権獲得を後半戦の目標に据えるクラブにとっては、そうした野心と志をクラブ内外にアピールするうえでも、地元出身の英雄は是非とも手に入れたいターゲットだったのだ。

次ページラス・パルマスよりもテネリフェのほうが出場のチャンスは大きい。

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