伝統の「エンブレム」から斬新な「ロゴ」へ――ユベントスが込めた未来への強い意志

2017年01月20日 片野道郎

シンボルマークとして画期的で新しい試みに満ちた新しいロゴ。

サッカー色は全くなくなったユーベの新しいシンボルマーク。サッカーの枠を超えた存在になりたいという意志の表われとも言えよう。 ※画像はユベントス公式ツイッターより

 1月16日(現地時間)夜、ミラノの国立科学技術博物館で「ブラック&ホワイト&モア」と題されたイベントが開かれた。
 
 主催したのはユベントス。トリノに本拠を置くこのクラブが、ミラノでイベントを開催するのも異例なら、その内容もまた異例だった。
 
 メインとなったのは、来シーズンから新たなクラブのシンボルとして使われるロゴマークのプレゼンテーションだった。
 
 クラブ創設(1897年)から間もない1905年以来、ごく限られた一時期を除いて長年にわたって少しずつデザインを修正しながら使われてきた、楕円形に白黒の縦ストライプが施された「エンブレム」は、今シーズン限りで廃止される。
 
 そして来年7月からは、旧エンブレムとは完全に一線を画す現代的なデザインの斬新な「ロゴ」が、クラブのシンボルマークとして使われる。
 
 ユベントスのイニシャルである「J」の文字、セリエA優勝のシンボルであるスクデット(盾)、そしてチームカラーの白黒ストライプを巧妙に組み合わせた、シンプルかつクリーンなデザインだ。
 
 この新しいロゴは、プロサッカークラブのシンボルマークとしては画期的で新しい試みに満ちている。
 
 単なるクラブの「エンブレム=紋章」という従来の枠を超えて、ユベントスという「クラブ」ではなく、むしろその「ブランド」を表わすシンボルマーク、つまり「ブランドロゴ」として機能するという意図が、はっきりと込められているからだ。
 
 それは、今回のプレゼンテーションで発表された、ロゴの展開に関する様々な写真を見れば明らかである。
 
 同時に開発された専用フォント、そして基本となるデザインルールと組み合わせて、ユベントスに関わる有形無形のあらゆるプロダクトに、この「J」のロゴがデザイン要素として展開されている。
 
 クラブの書類からウェブサイト、ステーショナリーや衣類、アクセサリーなどのグッズ類、さらにはスタジアムやショップの内装まで……。
 
 そこには、単なるイタリアの「ローカルなプロサッカークラブ」から、サッカーを軸として様々なビジネスを展開する「グローバルなブランド企業」に脱皮するという、ユベントスの新しい企業戦略が込められている。
 
 アンドレア・アニエッリ会長がこのイベントで、「今日はユベントスの新しいターゲット、つまり子ども、女性、そしてミレニアル世代に語りかけたい」と語ったのは象徴的だ。

次ページ保守的なイタリアのサポーターの反応はさほど悪くないようだ。

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