【選手権】精鋭たちの“記憶に留める”戦いぶり。取材ライターが目撃した個性、駆け引き、名門の矜持etc.

2017年01月11日 川端暁彦

目を引く個性に駆け引き、名門の凄みと苦しみ。

京都橘のU-19日本代表FW岩崎(7番)は、夏の王者・市立船橋を相手にインパクト十分のパフォーマンスを披露した。写真;茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 大会の優勝は青森山田(青森)。準優勝は前橋育英(群馬)。3位に東海大仰星(大阪)と佐野日大(栃木)。この結末は揺らがぬ事実で、当然ながら多くの困難をはね除けて勝ち残った4チームはまずリスペクトされるべきだろう(もちろん、4強「だけ」で大会を語るのは危険だが)。

【PHOTOギャラリー】大会優秀選手|GK・DF編
 
 徹底された戦術と個々の能力を兼ね備えた青森山田の優勝は納得できるものだし、伝統のポゼッションスタイルで勝ち残った前橋育英のサッカーも、結果として大差が付いたからと言って無視されるべきではない。山田耕介監督は「日本一勝負弱い監督」と自虐的に語ったが、才能豊かな1、2年生がいるだけに、その評価を覆すチャンスは来年早速あると見る。群馬の虎は何度負けても立ち上がる、そういう気風を確かに持ったチームだからだ。
 
 東海大仰星や佐野日大の奮戦ぶりも記憶に新しい。2校に共通したのは個々の敢闘精神とチームとしての団結力で、東海大仰星は両ボランチや左SBの面矢行斗、GK宮本一郎など個の力量・技量でも魅力的な選手がいた。佐野日大は練り込まれた戦術的駆け引きが純粋に面白く、技巧派ボランチの野澤陸をあえて先発FWに起用したことに象徴される海老沼秀樹監督の用兵も見応え十分。個人能力で言えば彼らより上の高校はあったと思うが、こうした「チーム力」を備えた高校が勝ち残ってくるのも選手権の醍醐味に違いない。
 
 大会前に青森山田とともに「3強」と見込んでいた東福岡(福岡)と市立船橋(千葉)だが、前者は東海大仰星に、後者は前橋育英にそれぞれ苦杯。東福岡は相手のシュート数を1本に抑えていたことからも分かるように内容的に劣った印象はないが、本来持っている攻撃のダイナミズムを欠いたのも否めない。森重潤也監督が「(負傷者が)間に合っただけになってしまった」と振り返ったように、主力選手の中にフィジカルコンディションの問題を抱えていた選手がいたことも災いした。戦いながら状態を上げていくのが理想で、準決勝以降にピークが来た可能性はあるのだが、その前に東海大仰星の堅陣を破れず、0-1での惜敗となった。
 
 夏のインターハイ王者・市立船橋は初戦で京都内定のFW岩崎悠人を擁した京都橘を死闘の末に下したものの、次の前橋育英戦で苦杯。強豪2校にダブルマークを受けるようなこの組み合わせは厳しかったという面もあるし、朝岡隆蔵監督が夏前から一貫して課題として挙げていたスコアラー不在が最後に出てしまったという結末でもあった。京都橘は岩崎がわずか1試合、それも無得点での終幕ながら怪物ぶりを発揮。あの日のフクアリにいた人ならば、誰もがその名を記憶に留めたに違いない。

【PHOTOギャラリー】大会優秀選手|MF・FW編

次ページ「新鋭校」への手厳しい洗礼。予選敗退校には新シーズンへのアドバンテージも。

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