【選手権】連戦と疲労、重圧…。青森山田はなぜ困難を乗り越え、初優勝を掴めたのか

2017年01月10日 安藤隆人

プレミアは「チャレンジャー精神で臨める」。選手権は「ウチに対して『打倒』で来る」。

高円宮杯に続き、初の選手権制覇で二冠を達成した青森山田。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 短期間で心身のコンディションのピークを2度つくること。それは簡単なようで非常に難しい作業である。

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『気持ちで何とかなる』
 
 それはあまりにも横暴な考え方だ。確かに優勝を目指すモチベーション、多くの観衆やメディアの前でプレーできる高揚感は、選手たちを突き動かす原動力となる。しかし、アドレナリンだけではどうしてもごまかしきれないのが『疲労』だ。
 
 今大会でこの『難敵』と一番戦っていたのが、青森山田だ。彼らは選手権まで1か月を切った12月に入ってからも、高円宮杯プレミアリーグEASTで優勝争いを繰り広げた。12月4日に17節の清水エスパルスユース戦のために、青森~清水間をバスで1往復。11日にはFC東京U-18との最終節で激しい消耗戦の末に、1-0の勝利を収め優勝を成し遂げ、青森~東京間を1往復。
 
 そこからわずか6日後の12月17日には、埼玉スタジアムでWEST王者のサンフレッチェ広島ユースと、延長戦までもつれ込む120分の死闘を演じ、PK戦の末に優勝を収め、再び青森~東京間を1往復。
 
 そして、わずかな青森滞在を経て、すぐに静岡県の御殿場合宿に向かい、そこから東京入り。チャンピオンシップからわずか16日後の1月2日に選手権初戦を迎え、ほぼ中1日の連戦を9日の決勝まで続けた。
 
「選手たちのコンディションのコントロールが非常に難しい」
 
 大会前の黒田剛監督のこの言葉は、心からの本音だろう。長距離移動と、タフな戦いの連続。高円宮杯チャンピオンシップで大きな山を登り切ったその先に、また大きな山がある。
 
 傍から見れば、高円宮杯プレミアリーグ、チャンピオンシップと比べると、選手権のほうがレベルは下がるから、問題ないのではないかと思われがちだろう。しかし、黒田監督はその見解を真っ向から否定した。
 
「プレミア、チャンピオンシップは相手の方が格上のパターンが多く、苦しい試合だけど、『失う物は何もない』とチャレンジャー精神で臨める。しかし、選手権はそうはいかない。ウチに対して『打倒』で来るし、それに対して戸惑ったり、受け身に回るとやられてしまう。そういう経験を何度もして来た。しかも今回はチャンピオンシップを獲ったことで、よりそのプレッシャーが強くなった」

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