【選手権】市立船橋が2回戦で敗退、インターハイ王者を苦しめた「ふたつ目の罠」とは?

2017年01月03日 平野貴也

京都橘との初戦に勝って「安心感があったのかもしれない」(朝岡隆蔵監督)

PK戦の末に敗れた市立船橋。まさかの早期敗退だった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

[選手権2回戦]前橋育英 0(5PK3)0 市立船橋/2017年1月2日/フクアリ

 夏冬2冠を阻んだのは「ふたつ目の罠」と、逆襲に燃えるタイガー軍団のプライドだった。
 
 第95回全国高校選手権は2日に2回戦を行ない、インターハイ王者の市立船橋(千葉)は、PK戦の末に前橋育英(群馬)に敗れて大会を後にした。早期敗退よりも驚いたのは、内容面だった。チームのエネルギーが枯渇していた印象を受けた。後半に巻き返したが、前半は相手に試合のペースを握られた。シュート数は前半が1対5、後半が6対1と対照的だった。
 
 終盤の決定力不足もさることながら、前半のスロースタートが悔やまれた。市立船橋の朝岡隆蔵監督は「動きが少し重かった。強い緊張感の1回戦を越えた後の試合は、難しい。初戦にターゲットを持って来なければいけなかったので難しい部分もあった。(ひとつ勝って少し)安心感があったのかもしれない」と話した。
 
 3年生にとって最後の大会となる選手権は、大きなプレッシャーがかかる。特に初戦は動きが硬くなるものだ。市立船橋は、12月31日の初戦でU-19日本代表FW岩崎悠人を擁する京都橘(京都)と対戦。たった一瞬でも隙を与えれば強烈なシュートを浴びるため、精神的にも肉体的にも緊張感のある戦いとなったが、苦戦しながらもねじ伏せて強さを示した。
 
 しかし、時間をかけて準備する初戦を乗り越え、勝利によって極度の緊張感から解放されてしまうと、回復のための1日が「魔の1日」となり、心身ともに戦闘モードに戻るのに時間がかかる。決して怠慢なプレーをしたわけではないが、プレッシャーを浴びてビルドアップできず、カウンターで脅かすこともできなかった前半が本調子でないのは、明らかだった。
 
 それでも相手が並であれば、試合中に調子を取り戻して勝利を得たかもしれない。しかし、相手も歴戦の兵。甘くはなかった。前橋育英は、様子見などしなかった。
 
 山田耕介監督は「京都橘は、少し引き過ぎたのではないかと思った。僕らは、もう少し前から行こうと。千葉県予選の決勝では、流経大柏が前から行っていた」とハイプレスを選択。出足の鈍い市立船橋からプレーの選択肢を奪い取り、2ボランチがセカンドボールの拾い合いに勝って圧倒的優位を築いた。

次ページ市立船橋が超えなければいけないものは、あまりに多かった。

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