【天皇杯決勝|戦評】最高の出来ではなかった鹿島が、それでも勝てた理由

2017年01月01日 白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

興味深かった石井監督のコメント。

120分間戦い抜いた鹿島。柴崎も献身的に中盤を支えた。写真:徳原隆元

[天皇杯決勝]鹿島2-1川崎/2017年1月1日/吹田S 

【天皇杯決勝PHOTO】鹿島 2-1 川崎|ファブリシオ弾で鹿島が今季二冠&通算19冠を達成
 
 試合直後、なんとなくゲームを振り返った段階では鹿島の「これ」という勝因が見当たらなかった。むしろ、「この程度のパフォーマンスでも勝ってしまうのか」というのが正直な感想だった。
 
 この日の鹿島は決して最高の出来ではなかった。前半に2度ほど大きなピンチ(13分と18分)を迎えており、このうちひとつでも決められていれば違う結果になっていたかもしれない。そう、川崎が勝つチャンスは十分にあったのだ。
 
 実際、1‐1と同点に追いついた後、"川崎の時間帯"は確かにあった。むしろ90分間に限れば川崎のほうが決定機を作っていた。それなのに、勝者は鹿島である。
 
 押し気味に試合を進めているように見えた川崎、耐える側だった鹿島の勝負を分けた要因はなんだったのか。両指揮官の言葉を借りれば、「経験」になる。より興味深かったのは、石井監督のコメントだ。
 
「コンディションの部分では、クラブワールドカップの決勝でレアル・マドリ―と延長戦まで戦った経験が生きた。内容的には、押し込まれながらもしっかり耐えてチャンスを窺うという、はっきりしたスタンスで戦えたところが良かった。それらが120分もった要因だったと思います」
 
 確かに、鹿島のサッカー(耐えつつ、カウンターやセットプレーでゴールを狙う戦い方)はどこか省エネだった。とりわけ攻撃の局面では、手数をかけずに少人数で攻め込む場面が何度もあった。
 
 対して川崎は前半からパスサッカーを出し惜しみなく披露するようなスタンスだった。フィールドプレーヤーが細かくポジションチェンジし、GKを除く全員でゴールをこじ開けようとしていた。
 
 結果的に、先に足が止まったのは川崎だった。前半に決めるべきところで決められなかったダメージが、燃料切れという形で出てしまったのだ。実際、大久保は後半からほぼ消えている印象だった。

次ページ気付けば鹿島が試合をコントロールし…。

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