【選手権】父のような輝きを――勝利に導く2得点を決めた鹿島学園の10番・上田綺世の原動力とは?

2016年12月31日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「お互いに分かり合っていたから、必然のゴールだった」

相手DFに抑え込まれる時間帯もあったが、一瞬の隙を突いて2ゴール。高い決定力を示した上田が鹿島学園を勝利に導いた。写真:早草紀子

[選手権1回戦]鹿島学園 2-1 高川学園/2016年12月31日/三ッ沢
 
 エースナンバーを背負う男の圧巻の活躍ぶりだった。
 
 先制される苦しい展開だったが、後半30分、同37分に訪れたチャンスを確実に仕留める。自らの2ゴールでチームを勝利に導いたのが、鹿島学園の10番、上田綺世だ。
 
 もっとも、まずは反省の言葉が口をついて出る。
 
「これを前半からできなければいけない。最初に失点して、自分たちが引退するような光景を思い浮かべて、危機感を覚えて、そこでスイッチが入ったと思う。だから、初めからスイッチを入れてやっていかなければいけない。1失点はいらなかった」
 
 リードを奪われ、みんな落ち込んでいるように感じていたという。それだけに、「自分のゴールや、自分の動きで、チームをもう一度、奮起させたかった」。
 
 同点ゴールは、途中出場の島村風雄のスルーパスに抜け出し、相手DFを軽やかなステップでかわして、左足のシュートを流し込んだ。
 
「島村くんは運動量が豊富で、ボールにもよく触れる。相手の嫌がるバイタルゾーンで走り回って、セカンドボールを拾うのが得意。流れを変えてくれた」
 
 島村とは小学校から一緒にプレーしている。どこに走れば、どこに出てくるかは分かっている。「やりやすかった。1点目は彼のおかげです」と上田は感謝を述べる。
 
 そして逆転弾は、木次谷和希のクロスを右足ボレーで叩き込んだファインゴールだった。
 
「普段から、木次谷のクロスからのゴールは多い。この時も"来る"って分かっていましたし、自分が(エリア内に)入っていくのも、木次谷は分かっていたはず。練習通りというか、いつもどおりというか、お互いに分かり合っていたから、必然のゴールだったと思います」
 
 上田はかつて鹿島の育成組織である鹿島ノルテJrユースに在籍していた。先日のクラブワールドカップを見ながら、上田はこんなことを考えていた。
 
「(決勝は)レアルが点を取りまくって勝つと多くの人が予想していたと思います。でも、一時はアントラーズが勝ち越すなど、見ている人を魅了していた。自分たちも選手権で、優勝候補と言われるチームと対戦した時に、アントラーズみたいに(周囲の予想を)覆すような戦いを見せたい」
 

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