浦和移籍を決断した湘南の背番号10が、言葉の節々に滲ませた強い覚悟

2016年12月30日 隈元大吾

「J1のトップレベルでチャレンジしたいという想いが上回ったというのが正直な気持ちです」

湘南の10番を背負う菊池は、浦和での勝負を選んだ。(C)SOCCER DIGEST

 去る12月28日、菊池大介の浦和への移籍が発表された。「中学生の時、湘南ベルマーレというクラブを選択していなければ今の自分はありません。この先どこに行ってもサッカーを引退しても、湘南で育った選手としての誇りと責任を持って人生を歩んでいきます。本当にお世話になりました(湘南公式HPより抜粋)」。生え抜きはクラブを通じて想いを寄せた。
 
 神奈川に生まれ、鳥取と長野で小中を過ごし、湘南ベルマーレユースに入ったのは2007年のことだった。同年トップチームに登録されると、菅野将晃監督のもとでさっそくJ2最年少出場記録を更新し、翌年にはJ2最年少得点記録もマークした。高3でプロ契約を結び、並行して年代別代表でも活躍した。2012年にはユースの頃から憧れを抱いてきたアジエルが背負う10番を受け継いだ。
 
 途中1年間の草津(現・群馬)への期限付き移籍を含め、丸10年が経つ。「街もひとも、一緒に戦ってきた仲間は、すべて自分の家族みたいなかけがえのない存在」。かみしめるように菊池は語る。
 
「生まれてからこの場所がいちばん長いので、クラブのスタッフはもちろん、お店も学校の先生も友だちも、自分をつくってくれた街でありチーム。自分の原点です」
 
 かなり悩んだと、葛藤を否定しない。そして、だからこそ決断の裏には強い覚悟がある。
 
「J1で3シーズンやりましたけど、長らくJ2でやってきて、年齢的なことやこれからの自分のサッカー人生を考えたときに、J1のトップレベルでチャレンジしたいという想いが上回ったというのが正直な気持ちです」
 
 天皇杯・準々決勝の大宮戦では1点ビハインドの後半途中からピッチに立った。慣れ親しんだ左サイドに入り、ドリブルで果敢に仕掛け、クロスが上がればボックスに走り込み、あるいは自ら切れ込みシュートを放った。らしく前向きなプレーでチームを鼓舞し、一度は逆転に成功もした。
 
 だが延長後半に再度逆転され、この試合をもって湘南のユニホームを脱いだ。

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