【浦和総括&展望】「最高」で「最悪」のシーズンに。尾を引きそうなラスト10分の慌てぶり

2016年12月26日 塚越 始(サッカーダイジェスト)

ルヴァンカップ優勝、年間勝点1位は称えたい。しかし鹿島の快進撃により、「史上最強の引き立て役」に。

シーズンラスト、浦和は毎年のように同じ失敗を繰り返している。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 浦和の2016シーズンは、クラブ史上最多の勝点74で「リーグ年間勝点1位」となり、失点28はリーグ最少、61得点は同2位。ルヴァンカップ優勝を果たして、10年ぶりとなる国内タイトルを獲得した。Jリーグアワードでのベストイレブン4人選出は、07年の5人に次ぐ。
 
 しかし、チャンピオンシップ(CS)決勝での敗戦と鹿島のクラブワールドカップでの快進撃によって、浦和は言ってみれば「史上最強の引き立て役」になってしまった。
 
 浦和が他チームにない高いクオリティのパフォーマンスを年間通じて発揮したのは間違いない。日々の積み重ねを信条としているだけに、リーグ最終節からCS決勝まで約1か月も空いたスケジュールは、やはり不利に働いた。

 J2・J3入れ替え戦、J2昇格プレーオフ決勝、それにCS準決勝と、"Jリーグ・プレーオフ系"の1試合制は、すべて同スコア(引き分け)であれば、年間順位の上位チームが優先されるルールだった。

 ところが2試合制のCS決勝のみ、アウェーゴール方式が採用されて、突然、上位チームの優位性が失われる(今回のように、2試合トータルスコアが同点でも、年間順位よりもアウェーゴールにより、年間下位チームが勝つ)。むしろ2戦目で、下位チームのほうがターゲット(目標)を絞りやすくなる。浦和が身体を張って証明したことになる、今回のシステムの欠陥については、この場で改めて言及しておきたい。
 
 とはいえ、2016年12月3日の浦和対鹿島のCS決勝第2戦――。6万人の超満員で埋め尽くされた埼玉スタジアムは、浦和を勝たせようという素晴らしい雰囲気に包まれていた。鹿島の統率のとれた応援も、試合の途中までは、あくまでも脇役だった。

 ホームのまさに赤く燃える圧倒的なボルテージが、浦和の選手たちを力強く後押ししていた。最高の舞台が整えられていたのだ。
 
 それだけに……最高で最悪のシーズンになってしまった。あまりに後味が悪く、残念ながら今回の喪失感は大きい。山の頂上に立つ続けていれば良かったシチュエーションを作りながら、残り約10分という大詰めで足を踏み外したのだから。
 
 とりわけ、終盤のドタバタ劇には目を覆いたくなった。1年間、この時(リーグ優勝)のために徹底されてきたはずの秩序が、タイトルを掴むための最も重要な時間帯に乱れたのだ。
 
 今季の浦和は見違えるほど、大人のチームになったはずだった。が、それは幻だったのか。いろんな積み重ねてきたことに対し、確信を持てなくなっていった。
 
 あのラスト10分間で見せた慌てぶりは、尾を引きそうな気がしてならない。
 

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