オスカールを高額売却のチェルシー、それでも1月の大型投資はなし?

2016年12月24日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

「高い買い物はしても、高過ぎる買い物はしない」が主義。

手駒を最大限に活用してチェルシーを復活させたコンテ監督。この冬もクオリティーとコストのバランスを見極めた補強をする見込みだ。(C)Getty Images

 新機軸の3-4-3(3-4-2-1)へのシステム変更以来、11連勝と破竹の勢いでプレミアリーグの首位を突っ走るチェルシー。その最大の功労者が、指揮官アントニオ・コンテであることは言うまでもないだろう。
 
 レンタルバックしたヴィクター・モーゼス、クラブ主導の獲得だったマルコス・アロンソと当初は戦力とすら見なされていなかった選手が今や不動のレギュラーとして活躍し、冬のメルカートの主役として話題に上るまでになっているのは、まさに"コンテ・マジック"である。スペインでは「バルセロナがモーゼスに興味を示している」という噂が立っているほどだ。
 
 そのコンテは1月のメルカートに向けて、CBとウイングバックの補強をクラブに求めている。夏にはCBのメインターゲットだったカリドゥ・クリバリにナポリが6000万ユーロ(約72億円)という破格の値札をつけたのに対して、自ら「ノー。高すぎる」と返事して獲得を諦めたコンテだが、信頼できるCBをもう1枚必要としていることに変わりはない。
 
 今冬はそのクリバリ、同じく夏に狙っていたコンスタンティノス・マノラス(ローマ)を狙うチェルシーだが、より獲得のチャンスが高いのはマノラスだろう。夏の要求の通りナポリのクリバリに対するガードは極めて高い一方、ローマは財政的に主力クラスを売って小さくない売却益を計上しなければいけない事情があるからだ。
 
 とはいえ、ここ最近のチェルシーは、「高い買い物はしても、高過ぎる買い物はしない」という姿勢で一貫しており、それにはコンテも同意している。M・アロンソとモーゼスの代役が事実上不在で、CB以上に補強が急務なウイングバックも、コストとクオリティーが折り合うプレーヤーが見つからない限りは、補強が見送られる可能性も小さくない。
 
 一方、ほんの数か月前には「このクラブで長く過ごして、たくさんのトロフィーを勝ち取りたい。僕はチェルシーとサポーターを愛しているから」と語っていたオスカールは、現地時間12月23日、中国の上海上港への移籍が正式決定した。
 
 これでチェルシーには、6000万ポンド(約84億円)という大金が転がり込む。にもかかわらず、コンテはクラブが希望した選手を獲得してくれるかどうか、少々不安を感じているという。
 
 しかし、もしそうなっても、コンテなら監督としての手腕でその穴を埋めるに違いない。クリバリを獲れなかった今夏にそうしたように……。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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