花火もサンドイッチも飛び交う熱狂ぶり!? 日本代表が警戒すべきタイの新鋭も台頭した東南アジアサッカーの祭典「スズキカップ」

2016年12月22日 佐々木裕介

ベトナムの奮闘に地元サポーターは花火に発煙筒、ペットボトルにサンドイッチまでも…。

日本代表も試合をしたラジャマンガラスタジアム。サポーターの焚いた発煙筒が燃え広がり、火事が起きてしまった。写真:佐々木裕介

 年の瀬が押し迫ったこの時期、日本のフットボールシーンは佳境を迎え盛り上がりを見せるが、私はアジア行脚をしていた。なかでも一番の目的は、アセアンフットボール最大の祭典とも言われる東南アジアサッカー選手権「AFFスズキカップ2016」を観ることだった。
 
 この「スズキカップ」を簡単に説明したい。創設されたのは1996年。東南アジアサッカー連盟(AFF)が主催し、2年に一度アセアン・ナンバーワンを決める大会である。初開催から長らく、シンガポールを拠点に東南アジア全土で飲まれるビール「タイガー」が協賛していたことから「タイガーカップ」と呼ばれ親しまれていたが、2008年からは日本の自動車メーカー「スズキ」がメイン協賛となり、今ではすっかり「スズキカップ」という呼び名が板に付いた。東南アジア版オリンピックとも呼ばれる「SEA GAMES」同様、国民の熱狂が凄まじいことで知られている。
 
 今回著者が現場取材したのは準決勝2ndレグの2試合と決勝2ndレグの計3試合。予選リーグを含めた他の試合はストリーミング観戦でカバーした。東南アジアで行なわれる試合はリージョンロックが掛けられていないことも多く、何処に居ても観戦できるのは非常に有り難い。
 
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【PHOTO】東南アジア最大のイベント「SUZUKI CUP」の美女サポーター
 
2016年12月7日(水)/準決勝2ndレグ「ベトナム代表vsインドネシア代表」@ベトナム・ハノイ
 
 ミーディン国立競技場でのベトナムホームの試合。著者が前回ここを訪れたのは2007年、アジアカップ準々決勝の日本代表対オーストラリア代表戦だった。イビチャ・オシムがPK戦を観ずにロッカーへ戻ったあの試合まで遡る。
 
 実に9年ぶりのミーディン、当時は真新しく品さえ感じた記憶が強いのだが、今では綻び老朽化は否めない。しかし周辺には高層ビルやコンドミニアムが立ち並ぶ街へ変貌を遂げていて、改めてベトナム経済の勢いを感じた。
 
 またトレーニングセンターや選手寮等、自慢の施設を併設したベトナムサッカー協会もスタジアムの斜め向かいにあり、一帯がベトナムサッカーの聖地となっている。平日にもかかわらず、試合開始4時間前には多くのファンが押し寄せ、活気づいていた。
 
 試合は終始ベトナム代表が攻め込む展開で進むが、先制に成功したのは数少ないチャンスを見逃さなかったインドネシア代表だった。
 
 ベトナム代表は交代枠を使い切った後にGKが一発退場となる愕然とした状況にもめげず、83分と後半アディショナルタイムにゴールを奪取、2試合合計タイとして延長戦へと持ち込んだのだ。
 
 この劇的な展開にスタンドでは花火や発煙筒が煙り、ペットボトルにバインミー(ベトナム風サンドウィッチ)までもが宙を飛び交ったことは想像に容易いだろう。
 
 しかしベトナム代表の勢いは続かず、PKでインドネシア代表に勝ち越しを許し、万事休す。それでも、ベトナムファンはスタンディングオベーションで彼らを称えた。勇敢に立ち向かう姿に心を打たれたのであろう。
 
 奇しくもこの試合は、ベトナム代表の英雄、レ・コン・ビン(ベガメックス・ビンズオン所属/元コンサドーレ札幌)の現役最後の試合となった。
 

次ページ育成年代の強化を図るミャンマーの進歩を実感。

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