ドイツに慣れ、シュツットガルトを把握した浅野拓磨が感じさせる飛躍の可能性

2016年12月16日 サッカーダイジェストWeb編集部

浅野が走り出すとボールが出てきて、スタジアムがどっと沸く。

幾度もチャンスを逸するなど、まだまだ改善すべき点は多々あるが、それでも浅野は、本場ドイツで確実に進化を遂げている。写真は11節カールスルーエ戦での先制ゴール。 (C) Getty Images

 2006-07シーズンには15年ぶり5度目となる優勝を果たしたドイツ名門クラブのひとつ、シュツットガルトだが、ここ最近は常に残留争いに苦しみ、昨シーズンはついに2部リーグへの降格を余儀なくされた。
 
 今シーズンは昇格請負人としてヨス・ルフカイが監督に就任したが、メンバー構成に関して強化担当のヤン・シンデルマイザーとが真っ向から衝突する事態が勃発した。
 
 特に焦点となったのが、移籍市場が閉まるギリギリで獲得したカルロス・マネ、ベンヤミン・パバルト、そして浅野拓磨の補強についてだった。
 
 3人の才能を認めながらも、「即戦力にはならない」とするルフカイと、「それを何とかするのが監督の仕事」と強調するシンデルマイザーはどちらも折れず、結局、ルフカイが辞任、ドルトムントU-19監督だったハネス・ボルフを後任として迎えるというかたちで、収拾がつくこととなった。
 
 だが、大事な序盤戦を人事のごたごたでもたつき、思惑通りのスタートダッシュを切れなかったことで、ファンのフラストレーションもたまっていたことだろう。
 
 そんななか、ファンのイライラを吹き飛ばす活躍を見せているのが、11ゴールのジモン・テローデ、4ゴール4アシストのマネ、そして2ゴール2アシストの浅野の3トップだ。
 
『ビルト』紙では「スーパートリオがチームを昇格に導く」と見出しを打ち、3人の活躍を特集したこともあった。
 
 得点を決めるのがテローデ、お膳立てをするのがマネ、そしてチームに息吹を与えているのが浅野だ。
 
 浅野が走り出すとボールが出てきて、スタジアムがどっと沸く。ただ速いだけではなく、簡単にボールを失わない。ゴールに向かったプレーができる。そんな浅野は、すでにファンからも一目置かれる存在だ。
 
 最初から全てがうまくいったわけではない。加入直後は単独での仕掛けばかりになりがちで、ボールを持ち過ぎては味方の攻撃リズムを崩してしまうことが多かった。
 
 ドイツのぬかるんだピッチに苦しみ、試行錯誤をしながらのプレーを強いられて、「トレーニングのなかでも滑る回数がすごく多く、切り返しでもスピードの変化がなかなかつけられなくて……。滑る怖さというのを常に感じながらプレーしている」と話すこともあった。

次ページ個人の目標は初の2ケタ得点、チームでの目標はもちろん…。

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