【蹴球日本を考える】手堅く勝って無傷で帰国したいレアル。鹿島はジーコの精神を発揮できるか

2016年12月16日 熊崎敬

レアルは悪いなりに勝つという現実的な試合運びを選択。

ハードスケジュールの合間を縫って来日し、帰国すれば現在首位に立つリーガでの戦いが待っている。レアル・マドリーとしてはできるだけ後を引く怪我だけは避けたいだろう。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 これぞ横綱相撲。盤石の試合運びで、レアル・マドリーが決勝進出を決めた。
 
 彼らは前夜の南米王者のような過ちは犯さなかった。
 ナシオナルは立ち上がりから全力で鹿島を潰しにかかったが、思い通りの展開にならなかったことで徐々にリズムを崩し、墓穴を掘った。
 
 一方のレアルは、悪いなりに勝つという現実的な試合運びを選択した。それは長旅を終えたばかりで、疲れと時差ぼけがある中で試合をしなければならないからだ。
 
 彼らはクラブ・アメリカの攻撃を受け止めるところから試合を始め、そこから徐々に支配率を高めて自分たちのリズムを作っていった。
 
 敵を押し潰すのではなく、ある程度泳がせながら好機をモノにする。こうした試合運びができるのも、ベンゼマやクリスティアーノ・ロナウドといった千両役者がいるからだ。
 
 決める時にしっかりと決め、きっちりと要所を締めてクラブ・アメリカを完封。試合後、鹿島との決勝についた尋ねられたジダン監督は、「次の試合まで時間がない。いまの我々に必要なのは休息を取ることだ」と語っていた。
 
 観る者にとっては少々退屈だったが、消耗を抑えて勝ったという意味でレアルにとっては申し分のない内容だったはずだ。
 
 脇の甘さを見せたナシオナルと違い、レアルが手堅く勝ったのは、もう一世紀以上、勝利を義務づけられてきた歴史があるからだろう。
 
 そんなレアルにとって、クラブワールドカップは獲るべきタイトルのひとつに過ぎない。その価値は、チャンピオンズリーグや国内リーグに比べて低い。
 できれば、この夜のような波風の立たない試合をして、無傷で帰国の途に就きたいと考えているだろう。
 
 そんなレアルに、鹿島はどう挑むのか。
 
 アジア勢初の決勝進出を果たした彼らは、すでにこの時点で十分に成し遂げている。しかも相手はレアル。公式戦で対戦するだけでも名誉なことだ。仮に敗れたところで、文句を言われることもない。
 
 こうした状況で、どこまでレアルを苦しめられるか。これはジーコの精神でもある、勝利への執着心が試される一戦だ。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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