変わりゆくトライアウトの"需要"と"供給"。最年長は40歳、タイ人選手も参加

2016年12月11日 海江田哲朗

2日間で延べ402人の関係者が視察。

今回のトライアウトでは、40歳の盛田(左)が最年長だった。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 キックオフ直後、ボックスの手前でボールを持った黄色ビブスの18番が右足を強振。鮮やかなミドルシュートがネットに突き刺さった。エントリーリストを確認すると、神田夢実(北海道コンサドーレ札幌)とある。
 
 ファインゴールに送られる歓声はない。神田は味方と軽くハイタッチをかわし、粛々とセンターサークルにボールが戻された。さらに神田は2ゴールを加え、25分3本の変則ゲームを上々の成果で終えた。
 
 12月8日と9日、JPFA(日本プロサッカー選手会)トライアウトがフクダ電子アリーナで行なわれた。エントリーしたのは、主に所属クラブを契約満了となった計104名。2日間で延べ402人の各クラブの監督や強化担当、エージェントなどが、今回のトライアウトを視察している。
 
 トライアウトの流れは、7対7のミニゲーム、11対11のゲーム形式のあと、ミックスゾーンでの取材対応や関係者への挨拶回りを行ない、要請があれば別室に移動して話を聞くといったもの。軽食を摂れるスペースも用意されており、選手同士やクラブ間の情報交換の場として活用されている。
 
「3得点と目に見える結果が出せてよかったです。自分の特長である得点感覚、攻撃面で違いを出せるのをアピールできた。まだ正式なオファーはなく、このトライアウトが先につながればいいのですが」
 
 と語る神田には、来季から愛媛FCを率いる間瀬秀一監督が早速接触していた。
 
 トライアウトは、所属を失ったプレーヤーとクラブ関係者が一堂に会し、現役続行を希望する選手の一助とするために2002年にスタート。当初は"落ち目の象徴"として敬遠する選手もいたが、年々その傾向は薄まり、2回目、3回目の参加となる選手が増えてきた。
 
 高柳一誠(熊本)は、2012年以来の参加だ。
 
「前回は怪我が治ったばかりであまり動けてなかったんですけど、今は自分の100パーセントの状態でプレーできています。そういえば、あの頃はまだ結婚してなかったですね。たくさんの人が支えてくれたおかげで、現在の自分がある。現役を続けたい。もっとプレーしたい。その一心です」

 山田晃平(AC長野パルセイロ)は、2011年のトライアウトでMLSのスカウトの目に留まり、コロラド・ラピッズからドラフト3巡目で指名された経験を持つ。
 
「プロとしてカテゴリーや報酬の面は当然大事なんですが、それよりもチームのスタイルを重視したい。パスサッカーを主体とするチームのほうが、自分の特長を生かせるように思います。いくつか話をいただいて選べる立場なら、ですけどね。このトライアウトから1週間が勝負。現役続行のために、できることは全部しなければ」
 
 今回、最も注目を集めたのは、最年長のエントリー選手となった、40歳の盛田剛平(ヴァンフォーレ甲府)だった。2日目午前の部に参加した盛田は、持ち前のポストプレーを披露。前線でポイントをつくり、攻撃をサイドに展開、放り込まれるクロスにヘディングで勝負を挑んだ。
 
「25分1本のみの出場。FWでのプレーは自分の希望です。これで移籍先が見つかり、新しいチームではまたディフェンスをやっているかもしれませんが、それはそれで面白い。僕の場合、自分から引退するという選択肢は持っていません。カテゴリーにもこだわりはない。家族が生活でき、選手としての自分に需要がある限り、プレーを続けたいと思います」

次ページ今回のトライアウトにはタイ人選手2名が参加。

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