成立間際のミラン経営権売却について渦巻く疑惑と憶測……全てはベルルスコーニの陰謀?

2016年11月23日 片野道郎

30年間の貢献に感謝したファン、対するオーナーは意味深発言…。

ウルトラスによる巨大フラッグとコレオグラフィーは感動的ですらあったが、現地メディアは別の思いでこの光景を眺めていたようだ。 (C) Alberto LINGRIA

 11月20日に行なわれたミラノダービーは、史上初の「チャイニーズ・ミラノダービー」であると同時に、中国資本への経営権売却が間近に迫ったミランのオーナー、シルビオ・ベルルスコーニにとっての「ラストダービー」という側面も持っていた。
 
 サン・シーロのクルバ・スッド(南ゴール裏)を埋めたミラン・ウルトラスも、ダービーの風物詩である選手入場時のコレオグラフィ(応援パフォーマンス)を、「世界で最も多くのタイトルを勝ち取った会長」に捧げた。
 
 ゴール裏の1、2階席をほぼ全て覆った、縦30メートル、横60メートルはあろうかという巨大なフラッグには、ビッグイヤー(CL優勝カップ)とクラブワールドカップのトロフィーを両手に抱えたベルルスコーニの姿が描かれていた。
 
 試合開始に合わせてそのフラッグが撤収された後には、「こんな夢はもう二度と見られないだろう。会長ありがとう」という横断幕が掲げられた。
 
 これにはいたくご満悦だったベルルスコーニだが、サン・シーロに到着してマスコミに囲まれた時には、「これが私にとって最後のダービー? 全くそうは思わないね」という意味深なコメントも残している。
 
 このコメントに対しては、様々な解釈がなされている。単にクラブを手放してからもダービーでは姿を見せ続けるという宣言だとする見方もあれば、中国資本の下でも名誉会長としてクラブに残るのではないか、果ては買収話そのものが白紙に戻る可能性があるという憶測すらある。
 
 このように解釈が割れるのは、以前にも伝えした通り、中国資本への売却プロセスに、今なお不透明な部分が残されているからだ。
 
 イタリアでの報道を総合すると、現在の状況は以下のようなものになる。
 
 クラブの経営権譲渡が正式に成立するためには、買い手である投資会社「シノ・ヨーロッパ・スポーツ」が、株式の取得に必要な4億2000万ユーロの買収資金を、ミランの親会社であるベルルスコーニの持ち株会社「フィニンベスト」に振り込む必要がある。
 
 それだけの大金を中国から国外(この場合は投資会社の所在地であるルクセンブルグ)に動かすためには、中国政府による外貨持出の認可が必要なのだが、現時点でまだ「審査中」の状態が続いており、当初の買収期日(12月2日)に間に合わない可能性が濃厚になっている。
 
そのため、買収成立に伴うクラブ経営陣交代を承認するための株主総会も、当初の2日から13日に延期されることになりそうだ――。

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