天皇杯・浦和撃破の原動力はアジア制覇の陰で感じた悔しさ。川崎の19歳は三好だけじゃない!

2016年11月14日 竹中玲央奈

一度足を攣りながらも復活し、117分の同点劇を演出。

天皇杯4回戦の浦和戦で、板倉はボランチとして先発フル出場。延長後半、3度目の同点弾を演出した。(C) SOCCER DIGEST

 とある浦和レッズの選手が、試合後に驚きを隠せずにいた。
「川崎、しぶといですね。足を攣ったと思った選手が復活してくるし」
 
 117分、川崎フロンターレがみたび息を吹き返した起死回生の同点弾は、その足を攣った状態から復活した選手の執念から生まれた。三好康児が左サイドから上げたクロスに反応した彼は、もつれながらも競り合いを制して頭で折り返す。それを、エドゥアルドが反応しネットを揺らした。
 
「後半の途中でけっこう足にきていたんですけど、気づいたら3枚(の交代枠)が終わっているなと。全部いかなければいけないと思いました。絶対に負けたくなかったですし。最後は力を振り絞りました」
 
 こう語るのは入団2年目の19歳、板倉滉だ。どうしても川崎の19歳と言えば、三好康児が浮かぶという人が多数派だろう。ただ、これを機会にぜひ、彼の名前を覚えておいてほしい。
 
 中村憲剛と大島僚太という中盤の絶対的支柱である2人が不在のなか、リーグ年間1位に輝いた浦和という強敵との一戦で、板倉はボランチという重要なポジションを任された。大観衆の圧、そしてリーグ戦では1年間で最も勝点を積み上げた相手ということもあり、立ち上がりこそ硬さが目立った。ゲームに入れていないことは明らかであった。
 
 しかし、浦和のスロースタートにも助けられ、徐々にチームのリズムに入っていくと、22分には中盤でボールを受け、恵まれた身体で相手のプレスをブロック。そのまま味方を使ったワンツーでボックス内に侵入し、あわやゴールという好機を作り出した。
 
 その後も冷静なボールさばきを見せると、「そこで負けたらいる意味がない」と普段から本人も語り自信を持つ空中戦で圧巻の強さを発揮。強豪を前に萎縮することなく、自身の武器を随所で発揮していった。
 
 しかし、体力にも限界がくる。先に述べたように、後半の終わりには足を攣ってしまい「延長前半の時は身体が動かない状況」だった。さらにチームは97分に1点ビハインドとなって得点が絶対に必要とされており、休む余裕もない。そのなかで、板倉は自らの判断で前線へポジションを移すのだ。

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