【U-19優勝の舞台裏】ほろ苦さ残ったアジア制覇。若きボランチが決勝戦で突き付けられたもの

2016年11月05日 安藤隆人

グループリーグ第3戦から先発の座に定着。そして迎えた決勝。

決勝のサウジアラビア戦で先発出場した市丸は75分までプレー。グループリーグ第3戦から先発の座に定着した。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 市丸瑞希にとってU-19アジア選手権は浮き沈みを感じる大会となった。

【写真】U-19日本、アジア初制覇!
 
 最初は『沈み』からのスタートだった。グループリーグ初戦のイエメン戦はベンチスタートで、ボランチで途中投入されたのも年下の原輝綺だった。その原が1ゴールを挙げるなど活躍し、市丸のボランチとしての序列が下がった。それが証拠に第2戦のイラン戦でもベンチスタート。ボランチで2試合連続スタメン出場を果たした神谷優太が負傷したが、代わって入ったのは、やはり原だった。
 
 しかし、グループリーグ第3戦のカタール戦でチャンスが巡って来た。この試合、神谷は負傷離脱し、試合には出られない状況になった。さらにチームとしても、負けはもちろん、0−0の引き分けでもグループリーグ敗退が決まってしまう厳しい状況に置かれていた。絶対に得点が必要なゲームだったため、守備的な原ではなく、より攻撃的な市丸がセレクトされた。
 
 過去2戦出場機会が訪れなかったボランチは、この起用に見事に応えた。市丸が得意とする縦パスが面白いように決まり、攻撃のリズムを生み出した。3−0の快勝に貢献すると、以降はスタメンに定着。準々決勝のタジキスタン戦では、その縦パスはさらに冴え渡った。
 
 8分、中盤でボールを持って前線をルックアップすると、「ボールを相手に覗かせたら、裏が空くのが分かっていた。小川がいいタイミングで走り込んでいたのが見えた」と、ディフェンスラインの裏に走り込んだ小川の頭にドンピシャで届くロビングを送り込んだ。小川が放ったヘッドは、ゴール右ポストに当たったが、こぼれ球に再び小川が詰めてヘッドで決めた。
 
 19分には自陣でサイドからの相手のクロスをインターセプトすると、「奪ったボールをすぐに、縦に入れることは、効果的だと思っているので、常に意識をしています」と語ったように、素早いターンから、裏へ抜け出したMF三好康児の足下へ糸を引くようなロングパスを送り込んだ。彼の精度の高いパスを受けた三好の折り返しから、最後はMF堂安律が試合の流れ早々と決定付ける2点目を叩き込んだ。
 
 準決勝のベトナム戦でもFKから正確なキックでFW岸本武流のゴールの起点となるなど、サブの存在から一気に主軸に『浮上』した彼は、サウジアラビアとの決勝でも、当然のように先発に名を連ねた。
 

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