名波ジュビロが内包する危うさ。第2ステージの急失速は"不運"や"偶然"ではない

2016年11月06日 サッカーダイジェスト編集部

攻撃的な形を目指して3バックを指向したが、守備陣には負担が大きかった。

最終節で仙台を下し、J1残留を決めた磐田。名波体制3年目はシーズン終盤に失速し、最後まで苦しんだ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 感動的な結末だった。敵地の仙台戦、今季苦しんだ名波二世と言われるキャプテンのMF上田康太が約30メートルのFKを沈める。それをGKカミンスキーら全員で守り抜き、7戦ぶりに勝利した。最終節でJ1生き残りを決め、遠く杜の都まで駆けつけたサポーターは歓喜。引退を決めたMF岡田隆が胴上げされた。
 
 だが、試合後の名波浩監督の言葉が現実を現していた。「(勝点)43ポイントの仙台がブーイングを浴び、36ポイントの我々が拍手喝采という、この立場自体、僕個人的にはおかしなことだと思う」。そう、名門・磐田は13位での残留を喜ばれてしまったのだ。
 
 第1ステージは、想像以上にすべてが上手くいった。昨季から在籍する3人の外国人(ジェイ、アダイウトン、カミンスキー)の活躍に、DF大井健太郎を中心としたハイラインハイプレスの守備。2節で浦和をアウェーで撃破し、9節ではホームで広島も破った。
 
 昨年J2を2位で抜けたチームとは思えない快進撃。昨季後半から急成長を続けた、愛弟子・MF小林祐希も6月に日本代表デビューまで辿り着いた。「クラブ全体として、良いニュース」。指揮官も喜んだ。
 
 その裏で確実に暗い影がしのび寄っていた。5月18日、元ギリシャ代表で37キャップを誇るDFパパドプーロスの加入が発表された。確かに、チームとして守備は課題だった。だが指揮官を含め、クラブの誰よりもキャリアのある大物は、プレーもプライベートもチームに完全には溶け込めなかった。

 深いタックルや強烈な対人守備。強みはあったが運動量に欠け、独特のハイラインハイプレスの守備にもなじまなかった。それでも指揮官は「思ったよりパパが早くフィットしたから」とパパドプーロスを入れた3バックを続けたが裏目。第2ステージは急激に勝点を落とした。
 
 そもそも名波流の3バック自体がリスキーだったのかもしれない。開幕は4バックが基本。守備的と言うよりは、より攻撃的な形を目指して3バックを指向したが、ただでさえ強度に欠ける守備陣には負担が大きかった。

次ページ主力流出の難しさにも直面。補強できないまま終盤戦を迎えたチームは残留争いに巻き込まれた。  

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