【U-19代表】エースの矜持を持ってA代表まで――。小川航基が最後のキックに込めた思いと未来への決意

2016年10月31日 安藤隆人

「エースの座は誰にも渡さない」

PK戦で5人目のキッカーとなった小川。落ち着いてゴールに沈め、日本に初優勝をもたらした。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

 緊迫したPK戦。内山篤監督は最後の締めをエースに託した。
 
 U-19アジア選手権決勝・サウジアラビア戦。延長戦を戦い抜いたFW小川航基に対し、PK戦の5人目のキッカーを命じた。そして、サウジアラビアがひとり外し、日本が全員成功で迎え、自らがラストキッカーとなるべく、ペナルティスポットに歩いて行った。ゆっくりとボールを抱え、丁寧にボールをセットすると、大きく息を吐いて助走体勢に入った。

【写真】日本 0(5PK3)0 サウジアラビア|決勝
 
「監督もみんなも最後に僕に任せてくれた。すごく嬉しいことだし、決めて優勝を喜びたいと思った」
 
 緊張の瞬間だったが、彼の中には自分に託してくれた指揮官と周りへの感謝と、素直な喜びしかなかった。そこにはPKを成功するイメージしかなく、「周りは『外すんじゃないか』と思っていたかもしれませんが、すごく落ち着いて蹴ることが出来た」と語ったように、思い切って放ったキックは、確実にゴールネットに突き刺さり、歓喜の瞬間を迎えた。
 
 U-19日本代表の絶対的エースとして、チーム立ち上げの時から内山監督をはじめ、周りから大きな期待を集め続けて来た。そして、その座は今大会でも不動であった。
 
「必ず結果が出せると思っていたし、自分はエース。この座は誰にも渡さないし、その分、プレーで貫禄を見せないといけないと思っています」
 
 このチームのエースは絶対に自分である。どんなことがあっても、それを譲るようなことがあってはならない。
 
 この彼のメンタリティが、どんなプレッシャーをもはね除け、今大会でも抜群の存在感を放ってきた。しかしながら、6試合を通じて3得点、決勝の120分間でノーゴールは、もちろん満足の行く結果ではない。だが、今大会は彼のゴールで始まり、彼のPKで終わった。U-20ワールドカップ出場を決めた決勝点も背番号9によってもたらされた。大会を通じて肝となるシーンを持って行くところは、やはりエースだ。
 

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