自身初の1試合・2得点を奪った相手は「家族が愛するクラブ」…バレンシアMFが複雑な感情に

2016年10月22日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

申し訳ない気持ちになったとしても、それは心の一部だけだ。

10月18日のリーガ8節で自身初の1試合・2得点を奪ったM・スアレス。しかし、その相手は……。(C)Getty Images

 両親や親戚など一族郎党すべてがヒホン出身で、生まれつきスポルティング・ヒホンの熱狂的なサポーターだ。それなのに彼、マリオ・スアレスがプロになって初めてのドッピエッタ(1試合・2得点)を決めた相手は、他でもないスポルティング・ヒホンだった(10月18日のリーガ・エスパニョーラ8節)。なんという運命のいたずらだろう。
 
「お前、今まで1試合に2点取ったことなんて一度もなかったのに、まったく……」
 
 TV局からマイクを向けられた父親がこう嘆いたのも無理はない。家に帰って、彼がどれだけみんなから苛められたかは想像に難くない。
 
 しかし、M・スアレスが申し訳ない気持ちになったとしても、それは心のほんの一部だけでのことだ。いま彼にとって大事なのは、スポルティング・ヒホン戦が初陣だったチェーザレ・プランデッリ新監督のバレンシアを軌道に乗せることなのだから。
 
 チームがM・スアレスを囲んでゴールを祝福しているその時にも、指揮官はチームに次の指示を出すことだけを考え、両手をあちこちに動かしていた。
 
 新監督を迎えたバレンシアは、個々のプレーヤーが輝きを取り戻したように見える。エンソ・ペレスはキャプテンらしいリーダーシップを発揮し、右サイドを切り裂いたジョアン・カンセロはバルセロナのチェックリストに名前が記された。
 
 そしてこの日のヒーロー、M・スアレス。アトレティコ・マドリーでの未来が見えなくなっていた約2年前には、インテル移籍が成立直前までいったこともあった。昨シーズンのフィオレンティーナでは不本意な状況に置かれ、わずか半年でワトフォードに放出されて、さらに今夏にはバレンシアにレンタル加入した。
 
 いずれにしても、プレーの舞台としてのイタリアには縁がなかったということだろう。ではイタリア人の監督との相性はどうか? 少なくともファーストインプレッションはかなり良好だ。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
 
※当コラムではディ・マルツィオ氏のオフィシャルサイトにも掲載されていない『サッカーダイジェストWEB』だけの独占記事をお届けします。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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